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入社当初からすごくモテてて、ここまでモテるのを見たのは人生で二度目。
一度目は自分が入社してすぐ。
現在、不本意ながらも彼氏の向坂だ。
「視線だけで意味合いまでわかるのって先輩だけだと思います」
「そう?」
「そうですよ、全部同じにしか思えません」
結構違うと思うんだけど。
千雪ちゃんに対するのは、好機を逃すまいという視線と誹謗の目。
「それにしても、あんなヤツのどこがよかったんですか?」
「イヤ、一応、先輩だよ?」
「そうですけど、そうなんですけど」
同族嫌悪というやつなのか、どうしても向坂を毛嫌いしている。
「向坂のよさ、ねぇ…」
考え込まなければいけないほど、そんなところ思いつかない。
だって、今まで接点なんかなかった。
ただの同期で、別にこの先にもお近づきになりたいとか、一回も思ったことがなくて。
たぶん、ここ最近は存在すら忘れていたかもしれない。
「それは俺も聞きたいな」
パソコンから目線を外さないまま悩んでいると、頭上から声が聞こえる。
隣からは、ゲッという声。
振り向かなくても、千雪ちゃんの表情を見なくても、後ろに誰がいるのかはわかる。
「仕事は」
「領収書持ってきただけでソレ聞かれる?」
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