ring.1

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「向坂さんが先週、指輪を買ってるところを見たの」 「やだ、ちょっとそれって、彼女がいるってこと?」 休憩室のドアを開けようとすれば聞こえてきた女子社員の会話。 いつの世も、どんなところでも人間二人いれば会話は成立するし、女子二人いればほぼ恋バナになる。 そりゃもちろん、自分だって友達といればそんな話だってするけれど。 普段なら、気にもせずドアを開けて中に入って、先輩や後輩の話を聞きたくもないのに聞きながらご飯を食べて。 「三木?」 名前を呼ばれて振り向けば、そこに立っているのは今正に休憩室内で話題になっているヤツ。 声にならないため息をつけば何か気に食わなかったのか、ヤツは極上の笑みを浮かべめっちゃ至近距離。 「彼氏に向かってソレはなくね?」 すっごい至近距離で言われるソレは、はっきり言って脅しなんだと思われる。 だって向坂は、ただの同僚。 部署が違うから、廊下ですれ違った時とかに挨拶するかしないかの間柄。 話したのなんて新人研修の時だけで、その後はお互い希望の部署に配属になったから会うこともなくなって。 「…どうぞ、中であなたの話で盛り上がってますよ」
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