ring.4

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「向坂も帰って大丈夫よ?」 千雪ちゃんを見送って、少し首を傾げて言ってくる。 不安そうな顔してるくせに。 「さっきも言っただろ、お前は俺んち」 とやかく言う前に手を引き歩き出す。 抵抗する気がないのかおとなしくついて来るけど。 仕方ないことだけど、張り合いがない。 「千雪ちゃんの前とあたしの前じゃ態度が違うのね」 「会社のヒトの前で本性出すわけないだろ」 「あたしも会社のヒト、なんですけど」 「同期は別」 みんな優しいよな、俺の本性言ってもいいのに誰も言わない。 まぁ、誰も信じないからだけど。 「向坂、ねぇ、あたしホントに大丈夫」 「あ?大丈夫とかそうじゃないとか関係ない」 イラッとした。 頼ってもらえないことになのかなんなのかわからないけど。 まだ不安な目で俺を見てるくせに。 「さき──」 道の真ん中で名前を呼ぼうとするその唇にキスを落として。 俺以外のことを考えられないようにしてやる。 頭の中、俺だけでいっぱいになればいい。 固まってしまった三木の手を再び引き歩き出して数分。 「一楓、いつまでボーッとしてるんだ」 「…え?」 「もう一回キスする?」 「──は?え?ここどこ?」 「俺んち」 なぜか驚いてるけど、確実に二回は言ったと思う。 でも安心したのか、ちょっとだけホッとしたような顔。
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