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それは謝ってないと言われればオシマイだけど、向坂は何を思ったのかキレイな笑顔を見せてくる。
あ、コレは怒った時の笑顔だ。
何も知らないけど、コレは知ってる。
研修の時によく見ていた顔だ。
「今の状況をわかってて言ってんだろ?」
笑顔のまま向坂に押し倒されて。
布団がすごいフワフワだとか押し倒されてるのに、そんなことを考えてしまっている。
頭が現実逃避をしようとしているのも、向坂の次の行動に今度こそ思考が停止した。
被さるように上に跨がってきた向坂が頬を撫でてくる。
なんで…そんなに優しく触ってくるの?
何も考えられないまま、困惑する目を向ける。
あたしは…ニセモノ、でしょ…?
こんなこと、されるがままなんて…なんか、ムカついてきた。
「一楓…目が据わってるんだけど?」
「気のせいじゃないかしら」
一向に頬から手は離れないけど、その手に自分の手を重ねる。
今まで余裕をかましてたのに、あたしが何かすると思わなかったんだろうね。
バッと勢いよく離れた。
「ダメじゃない、そんなので彼氏になり切れるの?」
なんて言うけど、あたしもヒトのことは言えない。
鼓動が速いのは気のせいだと、心の中で言い聞かせてるから。
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