ring.5

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それは謝ってないと言われればオシマイだけど、向坂は何を思ったのかキレイな笑顔を見せてくる。 あ、コレは怒った時の笑顔だ。 何も知らないけど、コレは知ってる。 研修の時によく見ていた顔だ。 「今の状況をわかってて言ってんだろ?」 笑顔のまま向坂に押し倒されて。 布団がすごいフワフワだとか押し倒されてるのに、そんなことを考えてしまっている。 頭が現実逃避をしようとしているのも、向坂の次の行動に今度こそ思考が停止した。 被さるように上に跨がってきた向坂が頬を撫でてくる。 なんで…そんなに優しく触ってくるの? 何も考えられないまま、困惑する目を向ける。 あたしは…ニセモノ、でしょ…? こんなこと、されるがままなんて…なんか、ムカついてきた。 「一楓…目が据わってるんだけど?」 「気のせいじゃないかしら」 一向に頬から手は離れないけど、その手に自分の手を重ねる。 今まで余裕をかましてたのに、あたしが何かすると思わなかったんだろうね。 バッと勢いよく離れた。 「ダメじゃない、そんなので彼氏になり切れるの?」 なんて言うけど、あたしもヒトのことは言えない。 鼓動が速いのは気のせいだと、心の中で言い聞かせてるから。
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