ring.5

7/7
891人が本棚に入れています
本棚に追加
/85ページ
イヤ、できれば呼んでほしくないんだけど。 言ってもそこは折れないんだろうな。 そこまで深く関わるつもりはないのに。 「帰る」 「まぁ、待て、つか今何時だよ」 確か千雪ちゃんから電話がかかってきた時、八時だった気がする。 まだそこから三十分も経ってない。 「八時って、おい、今日休みだぞ」 「ごめんなさい」 「イヤ、一楓のせいじゃないし」 「でも、あたしが起こしたようなもんでしょ」 千雪ちゃんの電話で起きた時、確かに寝てたと思う。 「フリでも彼女になったばっかのヤツが隣にいて、爆睡できると思うか?」 めちゃくちゃ爆睡したよ、あたし。 「え、起きてたってこと?ホントにごめんなさい」 「だから、一楓が謝ることじゃないから。そんなヤワじゃねぇし、気にすんな」 ありがとうって言うべきなんだろうか。 わからなくて、起き上がり背伸びをするその後ろ姿を見つめる。 「手を出さなかったご褒美はもらったしな」 こっちを向いた向坂は楽しそうに、自分の指を唇にあてて。 妖艶? 女のあたしから見ても朝から色気を振り撒いている。 「送るわ」 かわいげもなくて何を考えてるかわからない、そんなことを言われるあたしになんで向坂は構うんだろう。 同期だから? イヤ、でも他のヒトはここまでじゃない。 それに、この間まではホントに接点はなかった。 ストーカーがいるからって、別に向坂に関係ないと思う。 わからない、向坂蓮という人間が。
/85ページ

最初のコメントを投稿しよう!