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「そういや、その三木がお前のこと捜してたっぽいけど?」
「なんでソレを先に言わないんですか!」
再びガタッと音を立てて休憩室を飛び出した。
経理部の方に走りながら電話をかける。
『はい?』
「どこ?」
『屋上に向かってるところ?』
「行くから、待ってて」
返事を聞く前に電話を切って屋上へと向かう。
きっと、不安になってるだろう一楓を早く、抱きしめたい。
「一楓!」
「ぅわっ、はい」
扉を勢いよく開ければ、すぐそこにいたために驚いて目を見開いた。
「雨だぞ、なんで休憩室に来ないんだよ」
まだ帰ってきてないのに、どうしてかその姿を見て安堵してしまい抱きしめた。
「…行こうと思ったんだけど…」
抱きしめ返されてめちゃくちゃ驚く。
けれど、離さない。
変わってやりたいけど、変わることはできないから。
「ちょっと、外の空気吸いたくて…」
「さすがにちょっと寒くね?」
この密着状態がいつまで続くのかわからないけど、気持ちが落ち着くまで背中を撫でる。
なんだろう、今笑った?
「そうだね、ちょっと肌寒くなってきたかも」
俺の胸をトンっと押し離れた一楓は、やっぱり笑顔も何もない無表情だけど。
「少しは安心できた?」
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