ring.6

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「…知ってるのね」 それは千雪ちゃんが言ってたことだろう。 何も言わず笑顔を浮かべ、サラサラの髪に触れる。 あ、ヤバい、会社とは言え二人きりだから、キスしたくなってきた。 さすがに怒られるだろうから、必死に理性を保つけど。 「そういや、俺を捜してたって聞いたけど、会いたくなった?」 「…うん、なんかわかんないけどね、会ったところで何も変わんないと思うんだけど」 何それ、めっちゃ嬉しい。 せっかく理性抑えてるのに飛びそうだよ。 「彼女としては会わなきゃなぁって思って休憩室の前まで行ったんだけど、千雪ちゃんと楽しそうだったから」 「義務みたいな言い方。ていうか、やきもち?」 「やきもち?」 首を傾げる姿を見て思う、意識してなさすぎにもホドがあるだろ。 フリだから? 俺のことをスキになることもないんだろうけど。 だから、やきもちを焼くなんて考えてもない。 「あ、ご飯食べなきゃ」 「休憩室戻る?」 今は気を紛らわすためでもなんでもいいから、俺を利用すればいい。 本人にそんな気はなくても、俺が誘導すればいいだけ。 「時間のムダだから階段で食べる」 「つきあうわ」 「え、いいよ、もう食べたんでしょ、戻れば?」 扉を開け中に入りながら冷たい言葉。
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