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反論しようと一楓の肩を掴んだ時──
「三木さん」
聞こえた声にビクッと体を強張らせる。
それが掴んだ肩から伝わってきた。
特に何かされたわけでもなく、ただそうかもしれないと聞いただけでもやっぱり怖いんだろう。
これから何かあるかもしれないと思ってしまって。
「話があるんだ」
階段下にいる小川先輩は、何かを決意したような目をしてる。
あぁ、告白しようとしてるんだな。
千雪ちゃんは完全にストーカーだと思っていたけど、そうじゃない。
ただ、自分の気持ちを伝えようとするけど、うまく言おうとすればするほど言葉にならなかっただけなんだ。
「小川先輩、一楓はご飯まだなんで手短にお願いしますね」
「向坂くん、ありがとう」
なぜかお礼を言われたけど、俺ここにいていいんだよね?
二人きりにしてほしいとか言われないし、一応彼氏としては邪魔者は退散とかしたくないし。
「いても?」
「構わない」
とりあえず聞いてみれば、なんか許されるっていうか…
釈然としない。
「三木さん、あなたのことがスキです」
「え、あの…」
距離を縮めないままの、告白。
たぶん、一週間前のアレがあるから近づかないんだろうけど。
俺はニセモノだから、完全に俺の負けではある。
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