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脅して一楓の隣にいるから。
そんな一楓が見えないだろうところで手を握ってくる。
さすがに態度には出さないけど、かなりビックリして声が出そうになった。
「小川さんの気持ちは嬉しいです、ありがとうございます」
震えてるその手をギュッと握り返した。
もしかしたら、小川先輩とつきあっていたかもしれないと思うと、なぜか胸が痛い。
「だけど、あたしがスキなのは向坂、なので…」
少し詰まって言う言葉に鼓動が跳ねた。
わかってる、そう言うように仕向けたのは俺自身。
「つけ入る隙はない、かな?」
「…もし、向坂と別れることがあったとしても、小川さんに行くことはないです」
「厳しいな…ありがとう、聞いてくれて。これからも先輩としてよろしく」
そう言って笑う小川先輩に罪悪感。
もしかしなくても、俺がこんなことしなくても一楓なら大丈夫だったかもしれない。
「はい、ありがとうございます」
笑顔で立ち去る先輩を見ながら、一楓の肩に顔を埋める。
「ご飯、食べちゃダメですか?」
「どうぞ」
告白って非日常的なことだと思うんだけど、いつも通りだな。
一楓や先輩の勇気を目の当たりにして地味に凹む。
「…仕事終わったら、話がしたい」
「うん、いつものお店で待ってる」
俺にはそんな勇気はない。
いつか…
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