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「…すみません、ありがとうございます、あとで先輩にもお礼言いますね」
千雪ちゃんも彼女さんも表情が豊かで羨ましい。
ないモノねだりだけど。
ランチを頼んで来るのを待つ間。
急に千雪ちゃんが申し訳なさそうな顔をする。
「どうしたの?」
「…ホントは向こうに行きたいんじゃないかと思いまして…」
向こう?
って、向坂のとこってこと?
「でも、指輪をしてないということを配慮しまして別の席にしてもらったんですけど」
そんな配慮とか…
バレてたんだ、指輪してなかったこと。
後輩に気を遣わせるなんて、まだまだだなぁ。
「いるなんて知らなかったですし、ケンカ中なんですよね」
「うん?ちが…わなくはないかな」
否定しようとして、そういうことにしておこうかと思った、卑怯かもしれないけど。
だって、まだあたしは納得いってないし。
偽だって言うんなら、キッパリ別れた方がスッキリする。
千雪ちゃんにこのことを言ってもいいと思うんだ、言いふらさないだろうし。
ただ、何をするか予測不可能なところがあるから、やっぱり言えないね。
「気にしないで、あとでちゃんと話はするつもりだから」
「そうですか。ホンネはざまあみろと思いましたけど」
正直すぎるね、千雪ちゃん。
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