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やっぱり一楓はわからないな、そっちから来るとはマジで思わなかったよ。
「席変わろうか?」
「あ、いえ、ここで話すようなことではないので」
えー、話せないようなことって何?
どこか深刻そうな顔をしているような。
わずかな表情の変化に気づくけれど、それよりも話があるって方が気になる。
「食べ終わってんなら出ようか?」
「ありがと…あ、先輩、先ほどはありがとうございました」
「んー、いいよ、また休み明けに」
先輩に頭を下げ、会計を済ませて店を出て気づく。
「あれ?千雪ちゃんは?」
「もう帰った、一緒に来たけどそこで会っただけだし」
「そうなんだ」
店を出たはいいものの、どこに行けばいいんだろう?
話をするならやっぱり家?
でもな、昨日別れたばっかりだし、さすがにそこはダメだよな。
「向坂、こっち」
「うん?どこ?」
聞いたけど、何も言わずに手を掴まれて歩き出した。
イヤ、この連れていかれてます感、すっげぇ恥ずかしい。
手を放してくれないのなら、せめて隣を歩こう。
「一楓、どこに行くか教えてくれない?」
「…別れたから、もう名前呼ばないかと思ってたのに」
「あぁ…イヤならやめるけど」
「今さら、名字で呼ばれるのもイラつくわよね」
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