ring.8

3/8
前へ
/85ページ
次へ
やっぱり一楓はわからないな、そっちから来るとはマジで思わなかったよ。 「席変わろうか?」 「あ、いえ、ここで話すようなことではないので」 えー、話せないようなことって何? どこか深刻そうな顔をしているような。 わずかな表情の変化に気づくけれど、それよりも話があるって方が気になる。 「食べ終わってんなら出ようか?」 「ありがと…あ、先輩、先ほどはありがとうございました」 「んー、いいよ、また休み明けに」 先輩に頭を下げ、会計を済ませて店を出て気づく。 「あれ?千雪ちゃんは?」 「もう帰った、一緒に来たけどそこで会っただけだし」 「そうなんだ」 店を出たはいいものの、どこに行けばいいんだろう? 話をするならやっぱり家? でもな、昨日別れたばっかりだし、さすがにそこはダメだよな。 「向坂、こっち」 「うん?どこ?」 聞いたけど、何も言わずに手を掴まれて歩き出した。 イヤ、この連れていかれてます感、すっげぇ恥ずかしい。 手を放してくれないのなら、せめて隣を歩こう。 「一楓、どこに行くか教えてくれない?」 「…別れたから、もう名前呼ばないかと思ってたのに」 「あぁ…イヤならやめるけど」 「今さら、名字で呼ばれるのもイラつくわよね」
/85ページ

最初のコメントを投稿しよう!

890人が本棚に入れています
本棚に追加