ring.1

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小さく出たため息と言葉。 それは、ハンバーグのことであって、決してアレのことではない。 先週末に言われたことに対しては、何がなんでも否定する。 …や、できなかったから今のこの状況、なんだけど。 なんのために向坂の彼女のフリなんてしなければいけないんだろう。 「わっかんないなぁ、アイツの考えてること」 だって、そんなこと向坂が頼めばきっと誰だって引き受けてくれるだろうし。 自分じゃなくてもいいと思うんだよ。 年齢よりは幼い顔立ちの向坂は、この会社で一、ニを争うであろう人気者で、本人だってそのことは知ってるはず。 たまに見かけると、ムダにキレイな笑顔を振りまいているから。 同期にはその笑顔はないけれど。 一緒に研修を受けたヒトだけが知る、向坂の黒い部分。 腹の中は真っ黒だよね、向坂って。 「…あ、ヤバい、行かなきゃ」 腕時計を見て、何度目かのため息。 憂鬱、ほんっと憂鬱。 なんでこんな気持ちで週始めを迎えなければいけないのか、バレるのは時間の問題。 測ったかのようにピッタリとハマっている、右手の薬指にある指輪。 先週なかったモノが、ここにある違和感。 きっと、気づかれた瞬間に、あたしの人生終わる、かもな…
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