ring.8

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名前も名字もどっちもイラつかれたら呼べないじゃないか。 どうすればいいんだよ。 「ただ、向坂に名前を呼ばれるのは、なんかスキよ?」 「なんか、ってなんだよ」 カワイイことを言ってくれる。 無意識だからタチが悪いっつーか、魔性だよな。 会社内でこう思ってるのは俺だけじゃないハズ。 小川先輩とか。 「向坂?」 「ん?何?」 「時間あるならストレス発散につきあってほしいんだけど」 立ち止まった場所はカラオケ。 てっきり一楓の家なのかと思ってた。 あー、でも、家に行ったら行ったで、何もしないっていう保障もないし。 「いいよ、つきあう」 密室だけど、家じゃないから大丈夫…だよな。 一楓は行き慣れてるのか、淡々といろいろ済ませて気づけば部屋の中。 あんまり来ないから任せてたけど、一楓さんスゴイですね。 久しぶりに来たら全然わからない。 「なんか歌う?」 「イヤ、あんまウマくないからいいよ」 「そう、じゃあ話をしましょうか」 え?歌わないの? 「防音だから叫んでも平気よね」 どういうこと? 俺、怒られるってこと? 「ねぇ、向坂…」
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