夢と現実の狭間で

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「美味しいですよね?」 「はい。自分で言うのもなんですが」 「これだけ美味しいそばが作れるなら、上手く行くと思います」 「え? でも料理と声優の勉強は全く別では無いですか?」  ここが頃合いと見て、僕は用意していた台詞を、芝居がかったように彼女に伝えた。 「『学ぶ』と言う言葉は『真似る』から来ているんです。このそば、昆布の出汁がよく効いていて、クルミの味とも合ってすごく美味しいです。お父さんの味をここまで真似できる貴女なら、きっと上手く行くと思います!」  すると彼女はにこりと微笑んで、 「ありがとうございます。先輩にそう言われると嬉しいです!」  そうか、僕は先輩になるのか……、そろそろ出発の時間だ。 「こちらこそ、美味しいそばをありがとうございました」  彼女はうれしそうにしている。二杯分の代金を払って店を出ると、少しだけ心が晴れた気がして、僕は青森港に向かって歩き出した。
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