一 寂しいほど地味な女

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一 寂しいほど地味な女

 遠藤サヤカの私服はいつも、スカートと同じ色のベージュのジャケットだ。  髪は肩までのセミロングで、黒いショルダーバッグを斜めがけにし、黒いローファーをはいている。体格は中肉中背。顔に大振りな黒ぶちメガネをかけている。美人でもなく、不美人でもない。ちなみにパジャマは上下グレーのジャージ。  もしも 「どんなシーズンでも無個性でありきたり、面白みのない定番ファッションを提供します」  というカタログ雑誌でもあれば、サヤカこそモデルに抜擢しただろう。  小学校から高校まで、サヤカは常に「その他大勢」の一人でしかなかった。  かわいいテレビタレントや、個性的で美人のクラスメイトを遠くからあこがれ、自分もそうありたいと願ったこともある。  だが、少女のサヤカが水玉のワンピースを選んだり、リボンがついたブラウスを欲しがったりすると、厳格な両親は反対した。 「なにそれ、かわいいつもり?」 「似合わないぞ。人のマネなどせず、自分自身でありなさい」  夫婦仲が悪い両親はサヤカをけなすことにかけては、ふしぎと一致団結した。  サヤカの冗談は冷淡に無視され、笑い声はうるさいと言ってとがめられた。  自然、サヤカは控え目で自分の意見を言わない性格になっていった。  そのため、 「まったくあの娘は影が薄い、つまらない人間だ」  と誰もがサヤカにレッテルを貼った。それだけではなく、底意地の悪い仕打ちをした。  少女のサヤカにとって、それは一大事だった。  気分転換のために楽しいことを探すのではなく、自分自身をズタズタに分析することに時間をついやした。  みんなに嫌われる理由は、わたしが気が利かないせい? 気づかないうちに、思いやりのない態度をとったのだろうか?  悲しく思い悩んだ。  サヤカを励ましたり元気づけたりする者はいなかった。だれ一人。  おかげで些細なことで落ち込み、小さな過失で絶望した。自分は生きる価値のない人間だ、と断定するにいたった。  どうでもいい他人の態度に傷つくたび「ああ、死にたい」と重く暗くつぶやいた。  このようにして、声をたてず目立つまいとするうち、つまらない定番ファッションに身を包んで、大勢の中に埋没するようになったのである。
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