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「好きです」
高校二年生の夏、僕は東町公園でクラスの違う女の子に告白された。
別に好きなわけではなかったけど、何となくその子と付き合ってみることにした。
その公園は彼女にとって想い出の場所となった。
彼女とは事あるごとに公園で待ち合わせをした。自販機で冷たい飲み物を買ってベンチに腰を掛けながら他愛ない話をした。「好きだよ」と言われれば「僕も好きだよ」と答えた。そのたびに鳥が僕を見ている気がしてきて、少し申し訳ない気持ちになった。
「この前、妹がね――」
彼女には双子の妹がいるらしく、よく妹の話をしていた。
仲がいい姉妹なんて現実にいないと思ってた。
そんな彼女のことだ、妹が病気なった時なんかはものすごく心配して、泣きそうな顔をしていたのを、まだおぼえている。
なんの病気かは教えてもらわなかった。どう反応していいのか分からなかったから。
ただ、相当に重たい病気らしいというのは彼女の話から少しわかった。
夏が終わる少し前に、彼女が海外に行くことになった。病気の妹の治療をするためらしい。
僕は彼女を公園に呼び出した。僕から別れ話を切り出そうと思っていたのだが「戻ってくるから、待ってて」と先に切り出されてしまったので待つことにした。別に好きだったのかと言われればそういうわけではない。
長くなるのかな、なんて考えていたのだが、彼女は意外にも半年くらいで帰ってきた。
彼女の様子が明るかったので、治療は成功したのだと思った。
帰ってきた彼女は――
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