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誓いの夜
ざわつく会場を尻目に、俺は一週間前の夜を静かに思い出していた、、、。
「それはなりません!」
「そうです!そんな危険な場所一人で行かせられませんわ!
そうでしょ?バラン?」
「うむ。そうじゃな。
しかし、それしか手がないのもまた事実」
俺を取り囲み、あれこれと話を交わす三人。
一人は流れ者騎士のヤンゲル。
一人は最古の魔女から血を引いたクレア。
一人は書物を紐解いてきた賢者バラン。
一人ひとりが一騎当千の強者達。それを束ねるのが俺、勇者エイルだ。
「私ならこの大剣ジャイルで、どんな敵でも一掃出来るでしょう!」
「待ってください、そんなこと言うなら私だって、究極魔法アルカイトでドラゴンでもなんでも一撃ですわ」
「ふむ。そなたら二人の気持ちも実力もよく分かる。じゃが、ワシの膨大な知識の前ではそれらもまだまだよ」
「な、なにをー!」
「きぃー!なによ、いつもワシワシって、あなたなんてただの老いぼれじゃない!」
「お、老いぼれじゃと!?」
「そうだそうだ!クレアの言う通りだ!」
その騒がしさを俺は一蹴した。
「静かに!!」
、、、。
「皆の気持ちは有り難いが、俺の気持ちは変わらない。
一週間後、裏社会を牛耳るドン、噛みきりグッチが開催するゲーム大会には俺一人で潜入する。
そして、必ずや大会を制し、大魔王への道へと続く扉、大扉を開くための唯一の鍵を手に入れてみせる」
俺は三人の目を一人ひとりしっかりと見つめ、言葉と共に意思を示した。
「うむ、そうじゃった。長いこと旅を共にしていたせいか、あなた様が勇者であることを忘れておった」
「そうでしたわね。私達をいつも家族同然に接して下さっていたせいか、私も勇者様というより兄様に感じていたかもしれませんわ」
「そうですね。あなた様は勇者であられ、私達の誰よりも強く、優しく、知恵も持ち合わせていました。この大剣の扱いを教わったのも、何を隠そうあなた様からでした」
納得してくれた三人を前に、俺は今一度拳を握りしめ、必ずや成功させることを改めて誓った。
あれから一週間後の今。
俺はその誓いを成し遂げるため、ゲーム大会BINGOの選手として、大会会場に立っていた。
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