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精神科医「はじめまして、一元死刑囚のお父さん」
精神科医は一元の父、一元義男と対峙している。
精神科医「何度かメールではお話ししましたが直接お会いするのは初めてですね」
義男「うちの息子に何が起こってるんですか?」
精神科医「彼は自分が死刑囚であるという認識を拒んでるようなんです」
精神科医「彼は自分のことを引きこもりだと思っているようです。だから部屋から滅多に出ないのも、ご飯が勝手に出てくるのも自然だと思っている。」
精神科医「シャワーのために部屋から出てくるときも、コンビニに行ってる途中で雨が降ってきたと脳内変換して急いで通り抜けるんですよ?困ったものです」
義男「それは以前、説明を受けていたので知っていますが、あの錯乱はなんなんですか」
精神科医「彼は無意識に自分の罪を認めようとしています。詳しいことはなんとも言えませんが、彼は机の上にあるノートに鉛筆で自分の小学校時代からの被害者との思い出を書いてるようなのです。そこに、まるで赤の他人がつけたようなコメントまで書いて。ですが、次第に真相に近づくと自己防衛本能が働くのか、彼の行動を賞賛するコメントのみになっていきます。そして、真相に辿り着いた時に自分の罪を認められなくなり爆発してしまいます」
義男「どうにかしてそれを止める方法はないんですか」
精神科医「手は尽くしましたが、現状ありません。死刑囚だと理解させるのも彼にとっては酷なことかもしれませんし。一人の人間として申し上げれば、彼はこのまま夢の中で死を待つ方が幸せではないかと」
義男「わかりました。妻も息子のこんな状態を知らない方が幸せかもしれないですしね。今のまま心神喪失でベッドにいてくれた方が」
精神科医「お父さん!いつ死刑になるかわかりません。息子さんとは頻繁に面談しておくことをお勧めします。彼もお父さんと面談する時は幸せそうな顔をしていますから」
義男「わかりました」
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