愛情

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「まどかさんもいつもより濡れてる。気持ちいの?」  下からずんずんと突き上げられて、体が上下する。その度にナカで擦れて何も考えられなくなる。 「きもち……っぁ……んん……ふぁっ、ぁっ」 「俺も。ずっと繋がってたい」  こんなにも激しく揺さぶられているのに、背中を預けた安定している彼の体に安心する。  既に2回の絶頂を迎えている私の体は、敏感になり、少しの刺激ですぐにでもまた達しそうになる。 「あまねくっ……またっ、あっ……」 「待って、まどかさっ……今イカれたら俺、もたないっ」  余裕そうだった彼の息も途切れつつあり、汗だかお湯だかわからない水滴を体で擦り合って入り乱れていく。  彼はそう言うけれど、とても我慢できそうになくて、自分の意思とは関係なく、彼の熱を咥え込んだまま果てる。 「や、ばっ……キツ……」  彼の苦しそうな声が聞こえ、一気に体から圧が消えると、彼は私の体をぎゅっと抱き締めた。2人揃って息を荒げる。  彼の胸が上下しているのが背中に伝わり、浴槽に張った湯からでる湯気か、2人から出る蒸気かわからない白い靄が浴室を覆っていた。  両足を彼の太腿にかけたままの状態でいる私は、少しだけ体を起こす。  浴室のドアまで白濁の液が飛び散っていて、冷静になってみれば中々の大惨事だった。いつの間にか取れてしまっていた頭のタオルを拾い上げ、含んだお湯を絞る。 「……あんな方まで飛んでるよ」 「言わなくていいの。久しぶりだったからね」  ようやく呼吸も落ち着き始め、どっと疲れた体を再び彼に預ける。  おそらく汗をかいたであろう体をシャワーで流し、ようやく浴槽へと浸かった。洗い場にいた時と同じように、彼の胸に背中を預けた。 「あったか……。いくら運動してもやっぱシャワーだけだと寒いよね」 「もう絶対あまねくんとはお風呂入んないからね……」 「え? 何で?」 「毎回こんなことされたらリラックスできない……」  膝を抱えて鼻先まで顔を湯に浸ける。せっかくのお風呂なのに体はくたくただ。 「えー……。まどかさんだって気持ち良さそうにしてたじゃん」 「……」  お湯をぶくぶくとさせてしらを切る。 「聞こえないふりしないの」  後ろで彼が笑うから、お湯が少しだけ波打つ。 「ねぇ、それよりさ。まどかさん、仕事で何かあった?」  不意にそう聞かれて、顔をお湯から出す。 「仕事? 何で?」 「んー、昼休みにラインくれないこととか今までなかったからさ。急変とかあってお昼ご飯食べる暇もなかったのかなぁって」 「あー……。急変じゃないんだけどね、じわじわ系」  千代さんのことが心配で昼休みも早く切り上げたり、ご飯を食べててもそっちに気をとられてしまった。その結果彼をほったらかしにしてしまったのだけれど。 「じわじわ系?」 「うん。私の好きな利用者さんがいてね、おばあちゃんなんだけど。今、体調悪いんだ」 「病気なの?」 「うーん……少なからず病気はあるんだと思うよ。でも、施設ってよっぽどの急変でもない限り病院にはいかないの。だから、あの人の体の中で何が起こってるのかはわからない」 「そっか……。それじゃあ、心配だね。今も体調悪いんだ?」 「うん。ちょっと水分とれるようにはなったし、元気になってはきたけどね……96歳だしね。多分もうダメだと思う」  仕事中は口に出さないようにしていた。諦めたくはなかったし。けれど、私の経験がそう言っている気がした。
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