愛情

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愛情

 うっすらと目を開けると、ほんの少し明るくなった空から差し込む光が見える。  重たい瞼を必死に持ち上げながら、スマホを手に取った。時刻は5時56分。6時にセットしておいた目覚ましが鳴る前だった。  ゆっくりと体を起こし、寒さに身震いする。冬も終わりかけているというのにまだまだ朝は寒い。  隣を見れば、愛くるしい彼の寝顔。寝ていても起きていても綺麗なその顔に何度だって見とれてしまう。そっと手を伸ばし髪を撫でてみるけれど、朝が弱い彼が起きることはない。  私は思わず上がる口角をそのままに、キッチンへと向かった。  今日は私の仕事が休みで、彼は仕事。お互いの仕事に合わせてお互いの家に行き来する。  今回は、私が彼の家に泊まり、朝食を作る。とはいえ、私が仕事で彼が休みでも、もちろん朝が弱い彼が私よりも先に起きることはない。  ようやく使い勝手がわかってきた彼宅のキッチンで、朝食の支度を始める。付き合い始めて3ヶ月。彼と付き合えるまでには色々あったが、こうして彼のために朝食を作れるのは幸せ以外のなにものでもない。  夜の内に材料を確認しておいたし、時間のかかる煮物は夕食後に作っておいた。  それぞれを再度確認してから私は洗面所で顔を洗い、髪をまとめた。  キッチンへ戻り、料理を開始する。一人暮らしが長かった私は、朝の料理にも慣れており、大体30分もあれば簡単なものくらい作れた。  6時45分、頃合いを見計らって彼を起こしに行く。 「あまねくん、朝だよ」  彼の肩を揺すって起こす。  普段はしっかりしていて、頭の回転も早くて、大人びている彼。けれど、こんなふうに起こしても起きない程朝が弱くて、寝起きは動きも口調も緩慢な子供みたいな彼。  そろそろこんな彼にも慣れてきたけれど、もうちょっとスムーズに起きてくれるとありがたい。 「ねぇ、あまねくん! ほら、起きて。朝ごはんできたよ」 「……」  ピクリとも動かない彼。何でこんなに眠れるんだろう。  若さかな……いや、自分がこれくらいの年齢の時には既にちゃんと起きれていたはず。  大きく体を揺すって、肩をぺしぺしと叩く。私の頭の下に敷かれていた腕も伸ばしっぱなしになっている。
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