婚姻届

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婚姻届

8月3日 土曜日  晴天の中、あまねくんと2人で富士の牧場に来ていた。まだ付き合う前、どこへ出掛けようか話した時、牧場でソフトクリームを食べるのもいいねなんて話をしたのを思い出したから。  県内だけれど、日帰りデートには最適で、動物達を見ては癒され、ソフトクリームを食べれば気持ちもお腹も満たされていた。  こんなふうにデートをするのは何ヵ月ぶりだろうか。雅臣のことを忘れてあまねくんのことだけを考えていられる。   「次どこ行く?」 「モルモット!」  あまねくんの手を引いてモルモットがいる方へ走っていく。抱き抱えるとふわふわしていて可愛い。  真夏とあって、もこもこした子達を抱いていると汗が吹き出す。しかし、ダリアさんと日々運動しているからか、汗が出ることも嫌ではなくなった。  アスレチックで子供のようにはしゃぎ、あまねくんと一緒に走り回ることも初めてだった。 「あー、疲れた。ちょっと涼もうよ、まどかさん」  あまねくんがそう提案し、ハンモックがある日陰へ向かった。富士山の麓だから気温もいくらか涼しくはあるが、富士山の雪だってとっくに溶けてなくなってしまっている。  どこへ出掛けても暑いだろうが、それでも木陰は涼しかった。 「あー、気持ちいい」 「全然気温違うね。まどかさんハンモック乗る?」 「乗りたい!」  あまねくんに手伝ってもらってハンモックへ横になる。 「初めてハンモックに寝転がったよ。このまま寝れるー」 「最近、一緒にお昼寝もしてないからね。母さんいるとまどかさん離してくれないから」 「私も夢中になって話しちゃうからね。ダリアさん、全然話が尽きないんだよ。楽しくってさ」 「そっか。まどかさんが楽しんでくれてるならよかった。毎日運動もしてるんでしょ?」 「うん。今まで全然運動なんてしなかったんだけどね。今日のアスレチックも楽しかったよ」 「ね。俺も昔に比べて体動かす量減ったからなぁ。たまには一緒にランニングするのもいいね」 「うん。でも、外で走るのはもう少し涼しくなってからだね」  こんな中で走り回れば熱中症になってしまう。けれど、あまねくんと一緒にできることが増えるのは嬉しいことだった。  寝転がったハンモックに寄りかかるように両腕を乗せて、中を覗き込み、私の顔を見る。   「ジムでも行く?」 「あまねくんのお家、ジムみたいなもんじゃん」 「あー……。一時、律とハマって色んな機械買ったんだよね。多分律は未だに使ってると思うけど。でも、あの部屋しっかり防音されてるわけじゃないから、夜走ると結構うるさいんだよね。だから今はマンション近くのジム行っちゃう」 「仕事帰りに体動かすためだけに実家帰ってくるのも少し遠いよね」 「うん。だから中々ねぇ」  何気ない会話も幸せ。律くんがどこか出掛けてくれば? なんて言ってくれたから、雅臣が捕まってから初めてのあまねくんの休日にデートすることができたのだ。
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