残されたもの

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俺も潤くんも普段は生意気な玲司が甘えてくると可愛くて、ついつい無理なお願いも聞いてしまう。 その頃はまさかそれが大人になっても続くとは思ってもみなかったのだけど、一人っ子の3人が集まるといつだって最終的に一番強いのは最年少の玲司だった。 そんな玲司も潤くんの影響なのか、4年生のときに小学校のバレー部に入部した。 潤くんの家に泊まりに行くと、夕方に3人で近所の公園に行ってバレーをして、一緒に風呂に入ってはしゃぎ、にぎやかに食事をしたあとは安心して同じ部屋で眠った。 本当の兄弟ではないけれど、潤くんと玲司と一緒にいるときだけは、飾ったり取り繕ったりすることもなく素のままの自分でいられた。 自分の家でうまく息のできなかった俺にとって、二人は家族以上に掛け替えのない存在だった。 母との離婚から約4年後、俺が高校2年のときに父が再婚した。 再婚相手は父の病院に勤める看護師で、その人の連れ子の直人は俺よりふたつ歳下で、医者を目指していた。 父の再婚によってできた義弟のおかげで俺は自分の進路を自由に選べることとなり、跡取りの重圧から解放されたと言っても過言ではない。 義母や直人とは表面上仲良くはしていたけれど、父は医者を目指す出来の良い直人を実の息子である俺よりも可愛がっていたので、俺の居場所のなくなった家は、さらに居心地の悪い場所になってしまった。
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