初めての気持ち

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初めての気持ち

大学を卒業したあとは、潤くんの勤めている会社に就職して、一人暮らしを始めた。 その会社は母方の祖母が経営している業界最大手の文具メーカーだけれど、潤くんと同じように会長の身内であることは伏せ、他の学生と一緒に入社試験を受けた。 そして希望していた潤くんのいる本社営業部の二課に配属され、後に妻となる木村葉月と出会った。 同じ二課に配属されたもう一人の同期は、新人研修のときに同じグループにいた佐野志織だった。 新人とは思えない要領の良さで仕事をこなす葉月と、とにかく真面目で一生懸命頑張る不器用な佐野は正反対のようだけど、よほど気が合うのかあっという間に仲良くなったらしい。 学生気分が抜けきらず、イケメンの先輩たちの前で浮き足立っている他の新人とは、二人ともどこか違っていた。 そして俺は、会社ではチームリーダーの潤くんのことを“三島先輩”と呼び、敬語で話すようになった。 慣れるまでは何度も呼び間違えそうになったけど、俺と潤くんが身内だと言うことは会社では秘密にしておく約束だから、なんとかその約束を守るために気を抜かないようにした。
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