世界が変わる 190909

　女の人の艶やかな黒髪がフワリと風をはらむ。
　それはあたかも、窓際の白いカーテンを揺らす秋風との相関を示しているかのようだ。
　これは何かの暗喩なのか。
　きっと私はこの後、この暗喩が示す不吉な事故に巻き込まれて、それが更に何か思わせぶりな事件に発展し、失跡したこの謎の女の人を追って秋深い北海道の炭鉱町でラジオから流れるナット・キング・コールのプリテンドを聴きながら中古のシトロエンをエンストしないように慎重に走らせているに違いない。
　その先にあるのは。
　回復か。
　喪失か。
　はたまた、無意味か。
　そんなことを思っていると、瞼の向こう側から睡魔が春の熊みたいに音もなく忍び寄ってきて、私に手招きをした。
　こっちこっち。
　私は私の時間軸上の未来に思いを馳せながら、逆らえないそのまどろみに身を任せていく他なかった。