プロローグ

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プロローグ

 同じ陸上部の村井から、ある雑誌を借りた。  好きな人が居ても、恋人が居ても。それとこれとは別の事。それを世の女性達には、理解してほしいと思う……。  村井には「妹に見つかるなよ」と、釘を刺されたけれど。妹の佐和(さわ)は案外、寛容だ。  夜、部屋の外を確認する。向かいの部屋の佐和は眠っているのか静かだ。音を立てないよう、慎重に部屋のドアを閉める。  机の明かりをつけ、今日借りたばかりの雑誌を開く。きわどい水着姿の女の子達がこちらを見て微笑んでいる。  その中でも、一際(ひときわ)スレンダーな女性に目が止まった。割れた腹筋は、まるで男のようだ。写真の腹を指先で、そっと撫でてみる。  こんな風に、有吾にも触れてみたい。あの日触れ合った唇のように……。
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