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バレる
遅れて、夢吾が部屋に入ってくる。おそらく保健室で休んで居たのだろう。今にも倒れそうなほど、青白い顔をしている。
「この……恥知らず!」
夢吾の母親が、息子に平手打ちしようと、手をあげる。若石先生が慌てて止めに入ると、夢吾の母親は泣きながら怒った。
「佐和ちゃんだと思っていたのに……!」
急に佐和の名前を出され、胸が軋む。佐和は半年ほど前まで、夢吾に想いを寄せていた。
だけど、花火大会の終わりに俺達の様子が変だと気付いた佐和は、夢吾に気持ちを伝えることなく、身を引いた。
『お兄ちゃんの方が、夢吾くんを理解できると思うの』そう、俺に言い残して。
「おばさん、悪いのは俺なんです‼ 俺が夢吾に──」
「……夢吾。どうして、利人君なの? わたしの育て方が、悪かったから? だから、男の子を好きになったの……?」
夢吾の母親が、すすり泣く。それを見て夢吾も涙を流す。
どうしてだろう?
人を好きになるのは、素晴らしいことだって、大人達は言うのに。どうして俺が夢吾を好きになるのは、いけない事なんだろう?
誰かを好きになって、好きな人に気持ちを受け入れられた。それが、どうして人を傷つけてしまうんだろう?
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