プロローグ

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プロローグ

   南向きの窓から差し込む光を浴び、身体を伸ばす。淡い色彩に包まれた部屋の中で、歯ブラシを咥えながら、パソコンの画面を覗きこむ。  私は風花 里緒、(かざはな りお)現在、就職活動中!  専門学校を無事卒業したけど、希望の仕事に就くことが出来ず、就職浪人中……。  マウスを握り締め、カチカチと乾いた音を響かせ、正規職員を募集している会社のサイトを見つめる。希望の職種は秘書か総務。出来れば、今まで勉強してきたことを活かせる仕事に就きたい。  けど……。  世の中は甘くない。現在、十連敗中。張り切って試験に臨んだけど、悉く落ちた。  今日もパソコンの画面との睨めっこで終わってしまうのかな……。  悲壮感が部屋の中を漂い始めた時!  見つけた!  秘書を募集している会社を!  私は歯磨きを最速で終わし、洗顔をしてから、パソコン画面を真剣に見つめる。そこには、秘書の募集と書いてあるだけで、詳細な勤務条件については書かれていなかった。面接を行うので、事前に連絡を下さいとしか書いていない。勤務条件はその時に説明があるのだろうか。  一抹の不安が過ぎる……。  どうしようかな……。 給料、休暇、社会保険とか気になる事はたくさんある。  悩んでいても仕方がない!  私はスマフォを握り、広告に載っていた連絡先に電話をかけた。 「おはようございます。バスティーユ株式会社の刃矢菜(はやな)です。ご用件は何でしょうか?」  早速、明るくて元気な感じのお姉さんの声が響いた。 「おはようございます。私は風花と申します。秘書募集の広告を見て、ご連絡を差し上げた次第です」  私もはつらつと対応する。 「ありがとうございます。それでは、面接を行いたいので、明日の午後三時はどうでしょうか」  いきなり面接の話になった。明日は特に予定は入っていないけど。と言うか、今は毎日が日曜日のようなもの。 「大丈夫です。お伺いします。よろしくお願いします」  一瞬、気の迷いはあったものの、直ぐに回答をした。 「それでは、お待ちしております。会社の入口の受付に声をかけて頂ければ、私がお迎えに行きますので、よろしくお願いします」  そう言って、電話は切れた。  今日、連絡をして、いきなり明日に面接試験を行うなんて始めてだ。最初に書類選考とか、ないのだろうか。一抹の不安を感じながらも、私は履歴書を作成して、明日の面接に備えることにした。
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