悪夢の再来

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「大学構内で…何観てんのよ…」 それは人間の温かみが一切ない、凍りつくような冷え切った声だった。 俺は美沙の顔を見ることができない。 底知れない恐怖で、だ。 バタン 俺の真横にいた田中の姿がない。 今のは田中が床に倒れた音か!? そんな…一瞬で、音もなくやったというのか!? なんていう戦闘能力だ…暗殺者の所業じゃないのか… 「次はあんたよ、このチ●カス」 な…………チ●カス………だと……… こんなこと言われて引き下がるわけにはいかない…俺も男だ。人間だ。断じてチ●カスなどでは無い! 俺は張り裂けそうな胸を押さえて呼吸を整え、言い返した。 「おいおい、俺は男として、当たり前のことをやっていただけだろ?お、お前がこの部屋に入る前にノックをしないから、わ、わわわ悪いんじゃないのか…?」 くそ、声が震える。必死に冷静さを取り戻そうとするが、この女の力が計り知れないので、脳が危険信号を発し続けている。 「ま、まさかこんなことで俺と田中を、こ、こここここ殺そうって言うんじゃ…ななななななないだだだだだだだろろろろろうなああああああああああ!!!???」 俺は目を疑った。美沙が持っていたのは、死神が手にしていそうな鮮血がベッタリついた大鎌………… バタンッ………… 『ゃーん♡ぁん、ぁん、ぁん…………』
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