開かないドア

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それを聞いた俺と田中はほぼ同時にスマホを取り出して、電話帳を開き、適当な番号に電話をかける。 が、いつまでたってもコールが鳴らない。 『おかけになった電話は、現在使われていないか、電源が入っていない…』などという電子音メッセージも、流れない。 俺は田中の顔を見る。田中は首を横に振った。 電話が使えないだって…? さらに不安感が募る。 「…窓だ!窓から出れば良い!」 田中は少し興奮した様子でそう言って、窓に向かって行った。 「ここは2階よ!危ないわ!」 美沙が田中に声を掛ける。 「大丈夫だ、飛び降りるのは最終手段。外にいる誰かを呼んで、外側からドアを開けてもらう!」 そう言って窓の鍵に手を掛けるが… やっぱりか。田中が渾身の力を込めても、窓の鍵はビクともしないようだった。 手で強めに窓を叩いても同じだ。ペチペチという無機質な音が鳴るだけで、窓に衝撃が伝わっているように思えない。 この密室から外へは、通じていない。言い換えれば、リンクしていない。内側からも外側からも干渉を許されていないようだ。 どういう理屈なのか分からないが… 今俺たちがこうしているということは、外の世界の時が止まってしまっているのかもしれない。
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