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ベッドに二人並んで腰掛ける。
「先生、いま何歳?」
「33だよ」
「ほー」
「なんだその間抜けな声は」
「その歳で彼女もいないのかと思って。 結構カッコいいのにさ」
クリスマスイブに風俗なんて、恋人のいない客ばかりだ。珍しくもないけど、あの先生が、女を買おうとしていたのは意外だった。
「彼女はいないが、妻は、いる」
「結婚してんの? ならどうして 」
「……」
「うん、そっか。いいよ、ワケありなら無理に答えなくても」
「お前……大人になったな」
「だってもう、22だもん」
「いや、年齢的なものじゃなくて」
「職業柄、色んな人を見てるせいかなぁ」
「せいぜい、1、2年だろ」
リズムよく、指を一本づつ折って数える。
「7年? かな、夜の仕事は。風俗は6年くらい」
「おい、そんな前からやって、未成年じゃないか、違法だろ。いやいや、そういう問題じゃなくてな、」
「ちょっと先生、落ち着いて」
右手で彼の左肩を、ぽんぽん、と叩いた。
「香村は、そんな風にいつも楽しそうに笑ってたよな。そして、今も同じだ」
ずっと前から、私の笑顔はお面化している。人前では絶対に笑みを絶やさない。
「だから、傷が増えてるのか?」
私の左手に、視線で差す。
言い当てる彼の言葉に、胸の奥がチクッと痛んだ。
「えー、わかんない、自然発生じゃないかな」
へらへらと笑って返した。
「そうやってはぐらかす所も、全く変わってないな。心配してたんだぞ、高校も入学早々に辞めて、行方不明になって。なぜ俺に話さなかった? どうして黙って消えたんだよ」
「卒業した私のことなんかほっとけばいいのに、毎日メールしてくるんだもん。いい加減ウザくて」
「放って置ける訳がないだろ。俺に出来ることが限られていても、お前を守ってやりたかったんだよ」
だから私は逃げたの。あなたからも。
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