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第1章
私は、とある電気関係の大手企業に営業職として務める54歳の男である。
バツイチの独身で、一人暮らしをしている。
血液型はA型。
離婚をしたのは今から28年前。
結婚生活は短かった。
妻との間には娘が一人いたが、2歳の頃からもう会っていない。
あれから28年が経ち、2歳だった娘は今年30歳になっているはずだ。
離婚以降、妻にも娘にも一度も会ったことがない。
と言っても実は、娘には昔一度だけ会いに行ったことがある。
正確には、会いに行こうとした。しかし、会えなかった。
妻から会うことを完全に拒否されている私は、娘が通っているであろう小学校へこっそり顔を見に行こうとした。
しかし、2歳の頃から会っていないし現在の娘の写真すら持っていない私は、下校中の数多い小学生の中から自分の娘を探し出すことができなかった。
それに、下校中の小学生達をじろじろ見て不審者扱いされるわけにもいかないので、結局そのまま帰ったのであった。
ドラマのように自分の娘を一目みてわかるということもなく、一体自分は何しにここまで来たのか、娘に会って何と言葉を発するつもりだったのか、何がしたかったのか。
そう考えるととても切なくなって、帰り道車を運転しながら泣きそうになった。
そのことは、今も思い出すだけで情けなくなる。
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