第1章

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離婚の理由は、簡単に言えば生活や価値観の不一致。 若さゆえに、勢いで結婚してしまったことが反省点かもしれない。 もちろん、妻との結婚生活の間、浮気や不倫は一切していない。 私はそんなことをするタイプの男ではないし、何より妻と娘のことを愛していた。 ただ、仕事が忙しく家に帰るのが夜遅かったり、接待での飲み会が多かったり、土日も付き合いでゴルフに行ったりと、家族と過ごす時間があまりなかった。 休日に家族と過ごしていても、仕事の連絡が入れば出ていくこともしばしばあった。 妻に離婚された一番の理由は、私が仕事を優先しすぎていたことだった。 そんな私も、この会社に就職して早いもので32年が経つ。 今では、営業部の課長にまでいきついた。 妻は離婚したとき、養育費は一切要らないと言った。 その代わり、完全に縁を絶ちたいとも言った。 その言いつけ通り、私は離婚してから今まで養育費を一切払っていないし、妻とも娘とも会っていない。 私は、家族を愛していた。 だけど、幸せにはできなかった。 働いていたのは、家族のため。 けれど、その家族を幸せにさせてやることができなかったのなら、私は間違っていたのだろうか。 私は一体、どこから間違っていたのだろうか。 しかし今思えば、妻にも仕事に対する理解が少し足らなかったような気もする。 現在、娘に会えないという心の傷は痛いが、離婚して28年が絶った今、私はそれなりに幸せに過ごしている。
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