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メール<電話
『じゃあ、後で迎えに行くから』
『うん! 着く時メールしてね。玄関の前で待ってるよ』
『中で待ってて。湯冷めして風邪ひいたらどーすんの』
『ん〜。分かった。…じゃあ、玄関の中で待ってる!』
『ちゃんと暖かくしてなよ?』
『はーい!』
「また後で」と言う彼女の声から「プーップーッ」という乾いた音に変わる。ゆっくりとスマホを耳から離すと、光る画面から彼女のアイコンがこちらを見ていた。
彼女の弾んだ声が、まだ耳に残ってる。それだけじゃない。クスクスと可愛らしい笑い声だって、眉間にシワを寄せて怒る顔だって、クリクリの目にいっぱいの涙を浮かべている顔だって覚えてる。
……ちゃんと覚えてる…まだ、ちゃんと彼女の全てを思い出せる…のに。彼女の未来に、その隣に、俺が居られないことが凄く悔しい…。
俺はスマホを伏せて置くと、両手を見つめた。
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