学校で

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学校で

凖平君の言ったことは、ある意味本当です。私はデブです。デブで汗っかきで、クラスの子達も良く食べます。美人でほっそりしたお母さんとは、ちっとも似ていません。お母さんにその話をすると、お母さんは必ず笑ってこう言います。 「心配しなくても大丈夫よ、真美ちゃん。お母さんもね、真美ちゃんぐらいの頃は真美ちゃんよりも大きかったわ。でも、中学生、高校生になって部活動に入ると劇的に痩せたのよー。真美ちゃんはまだそんなことを気にしなくてもいいのよ。それよりも、お母さんのつくったご飯をいっぱい食べてちょうだい。」 私はその言葉を聞くと、いつも安心して、お腹いっぱい食べてしまいます。 学校の時間で一番好きなのは、給食の時間です。実は、この学校の給食のメニューはお母さんがアドバイスしているんです。作っているのはお母さんではないけど、お母さんが考えた料理ばっかりなんです。だから、お母さんがつくった料理ほどではないけど、給食もとても美味しいです。美味しい給食を食べながら、皆でお話できるので、私は学校でこの時間が一番大好きです。 「俺、ピーマンやだ。杉田食べてよ。」 岡崎君は好き嫌いが多いです。なので、いつも私が野菜などは食べてあげます。この給食のお野菜はとっても甘くて美味しいのに、もったいないです。 「岡崎君、ピーマンちゃんと食べなきゃダメだよ。先生に怒られるよ。」 「違わい。杉田が欲しいって言ったからあげたんだい。」 「岡崎くん、嘘は良くありませんよ。」 「わ!先生。」 担任の酒井千里先生が私たちの班の方に笑いかけながら、言いました。先生はとっても良い先生です。私たちのクラスにいじめが無いのは、先生のおかげです。相原君は私に意地悪してくるけど、いじめではありません。私もちゃんと言い返しますから。 とにかく、先生がスゴいのは、私たちをちゃんと怒ることです。3年生の時の先生は、優しかったけど、男子たちが悪いことをしても、何も言ってくれなかったんです。私たちは先生が大好きだけど、先生が怒るとものすごく怖いので、いじめは絶対にしません。先生がこの世で一番大嫌いなものがいじめだからです。 「千里先生、岡崎君がピーマンを真美ちゃんのお皿に入れてました。」 彩音ちゃんが千里先生に告げ口しました。 「岡崎君、ちゃんと自分で食べなきゃいけませんよ。」 「・・・だって、ピーマンまずいもん。杉田は何でも食べるからあげたっていいじゃん、先生。」 先生は岡崎君の顔を覗き込んで言いました。 「雅也くん、大人になってからピーマンが食べられなかったら恥ずかしいよ。大人だってね、ご飯を一緒に食べるとすごく仲良くなるの。その時に好き嫌いが多いと困るぞー、何でも食べれる真美ちゃんは偉い。大人になってからも真美ちゃんはきっと沢山友達ができるよ。大好きな彼女が作ってくれた料理とか、仲良しの友達が教えてくれた料理とか、食べられなかったら、雅也君の大好きな人が悲しむぞ?」 雅也君はプイッと横を向いて、少し照れているみたいです。それに、思ったほど先生が怒らなかったから、ほっとしてるみたい。先生もお母さんほどではないけれど、可愛くて、お母さんよりはずっと若いです。 「それよりもね、人の皿に勝手に移すなんてことは絶対にしてはいけません。アレルギーとかで、どうしても食べられなかったら仕方ないけど、食べ物を大事にしないのは、とっても残念だな。」 先生はニコニコしてるけど、本当は岡崎君のしたことに悲しんでいるんだと思います。今日は優しく注意してくれたけど、先生は怒る時も真剣です。 「・・すみません、先生。」 「謝るんなら、真美ちゃんに謝らないとね。」 先生はこういうとこは厳しいんです。ニコニコしてるけど、絶対謝らせるつもりです。 「・・・杉田、ごめんなさい。」 私は、手を振って笑顔で答えました。 「いいんだよ、岡崎君。私、ピーマンも好きだから。なんか食べてほしいのがあったら、ちゃんと言ってね。」 先生はそんな私の顔をじっと見つめてこう言いました。 「真美ちゃん、イヤなことはちゃんとイヤだと言わなきゃダメよ。」
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