パーティーガール

1/2
前へ
/27ページ
次へ

パーティーガール

千里先生の言うとおり、私は嫌だと思うことを嫌だと言えない性格でした。私が小学三年生のころ、お母さんに連れられて出版社のパーティーに行ったことがあります。お母さんのレシピ本がとてもよく売れたお祝いということでした。 初めてのパーティで私はウキウキでした。この日のためにお母さんはピンクのフリフリがたくさんついたドレスを用意してくれました。お母さんは青の少しパツっとしたイブニングドレスで、細身のお母さんにとても良く似合っていて、まるで本の中の女王様のように綺麗でした。  (お母さん、きれい・・・) 私は、お母さんのことが自慢で、それでいてどこか羨ましいような気持ちでした。私も少しでもお母さんに似ていたらと、思っていました。 「あれ君、玲子先生のお嬢さんかい?」 その時、見知らぬおじさんが私に話かけてきました。私は一目見た時からイヤだな、と思いました。顔はお酒を飲んで赤くなっているし、息と体が臭くて、顔をそむけそうになりました。 「・・・はい。」 私は、なんとかか細い声で返事をしました。本当は早くどこかへ行ってくれないかなと、強く願っていました。男の人はガハハと下品に大きく口を開けて笑っていました。 「へーー、何だか全然似てないね。君はお父さんに似たのかな?」 私の足元の地面がガラガラと音を立てて崩れ落ちていきそうでした。そんなこと、おじさんに言われなくてもわかってる。私は、涙が零れ落ちそうになるのを感じ取ると、会場の外に走って出ていきました。お母さんがすぐに私を探しにやってきました。私は、お母さんの前では泣くまいと、我慢して早く帰りたいとだけ急かしたのをぼんやり覚えています。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加