動物

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 動物を飼ったら生きがいになるかもしれない。俺はたしかにそう思った。それがどうしてこうなったんだろう。  俺は部屋の隅にいる猫を見た。サボテンの横で寝そべる猫の目は、俺を睨んでいる。  ペットショップに行った俺は、やはり定番の犬猫に目が行った。どれも十万円ぐらいの値札がついている。高いな。小動物か魚にしようか?熱帯魚を見た。熱帯魚はわりと繊細じゃなかったっけ。もう少し生命力のありそうなの。小鳥は?小さい雛は心配だな。ウサギは寂しがりやだっけ?植物を選ぶときと同様に俺は一人であれこれ悩んでいた。  犬猫のゲージの一番端に、ふてぶてしい猫が一匹いた。値札を見ると一万五千円が赤ペンで消され半額の七千五百円と書かれている。安い。売れ残りなのか、もう子猫の時期を過ぎかけていて、まあまあ大きい。俺がゲージの前に行っても動じもせず横たわっている。こいつにしようと直感で思った。アメリカンショートヘアのメス。名前はアメと適当に名付けた。  ネットで調べるとメスの猫はわりかしおとなしいと書いてあるから安心していたのだが……  アメは本当にメスなのかと疑いたくなるほど暴れん坊猫であった。部屋を走り回り、パソコンにも乗り普通に仕事の邪魔をする。一時間に一度は餌を催促し、餌はどれだけやっても食べる食べる。俺が魚を食べていると奪い取る。なのですでに丸々し始めていた。アメはサボテンにも喧嘩を売り、最初はサボテンの棘で怪我するのではないかと心配したが、いつもサボテンの方が猫パンチされて負けていた。今やサボテンは一日一回は倒れているところを俺に助けてもらうこととなった。  アメがやってきて、多少賑やかにはなった。しかし、なんだ。アメはたとえ俺が死んでも野良になり、一匹で生きていけるタマである。飼ってすぐに死なれたら悲しいからとたくましそうなのを選んでしまったが、正直言ってたくましすぎてあんまりかわいくない。こう思っているのが伝わっているのかアメは今ひとつ俺に懐いていなかった。今俺を睨めつけているのもそういうことだと思う。  俺に起きた変化と言えば、早朝にアメが散歩に行きたがり叩き起こしにくるので、毎朝決まった時間に起きられるようになった。アメは犬じゃないから、窓を開けてやれば勝手に散歩に行くのであんまり手はかからない。それ以外俺の生活に変化はなかった。  ところがある朝、異変が起きた。いつもどおりアメを散歩に行かせた後、俺は仕事をしていたのだが、一向に帰ってこない。いつもは三十分もすれば帰ってくるのにどうした。    
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