生きる理由

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「検査したところ特に異常はないので病気ではないですね。ほとんど昼夜逆転生活で食事はカップラーメンとのことなので、生活を改めてみてください。体重も軽すぎるのでもう少し食べてくださいね。今日はとりあえず点滴を打っておきましょうか」  医者にそう言われ、点滴を打ってもらい市民病院を出た。点滴のおかげで少し体が軽くなったので、電車で帰宅しようと電車に乗った。タクシー代を往復で出すのはきつい。  平日の昼間なので、電車はガラガラだ。電車に揺られながらぼんやり思った。  生活改めろ……か。もともと体は弱いし、養生しないとすぐ壊れる体なのは自分自身がよくわかっていた。前の会社も体を壊したのを期に退職しているのだから。  だけど、健康になったところでなんの価値があるのだろう?一生懸命摂生して、元気に生きたところで、その先に何もないのに。体がもう少しよくなっても、もう会社員に戻りたくなかった。今の在宅仕事でもギリギリ生活できているし、職探しが面倒だ。彼女も前のと別れてから二年ぐらい経っていたが、新しい彼女が欲しいとも結婚したいとも子供が欲しいとも思えない。どれも面倒だと思ってしまう。男としては情けない思考回路をしている自覚はあったが、面倒なものは面倒だ。  こんな俺は、社会にも実家にも荷物でしかないだろう。現に母も姉も、将来こっちに負担かけてくんなよとしか思っていない。  とはいえ、体調不良は辛いから、体調を崩してしばらくはさすがに摂生する。しかし喉元すぎればなんとやら、気がつけば不摂生に戻りしてしまう。睡眠時間もそうだが、米を炊くことすらできない上に野菜嫌いなので食生活を改めるのが難しくてしょうがない。数週間後、俺はまた体調を崩した。何も食べられない。先日病院に行った日よりまずいと思った。こんな気分で夜眠れるはずもなく、昼夜逆転はさらに加速しそうだった。  このままの生活だと、まじで死ぬかもしれない……いざ「死ぬかも」と思うと、やはり恐怖を感じた。こんな自分が、この体がどうなっても知るかと思ってたけど、やっぱり死は怖い。  生きる理由が欲しい。ダサい言葉だけど、俺はそう思った。「あなたが生きていてくれないと困る」と誰かに思って欲しかった。  そういえば「生きる価値」とか「生きる理由」で検索かけてたときがあった。前々からそう思ってたんだな。       
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