出会い

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出会い

 家の近くを周回するようにアメ探したがいない。アメがどこを散歩しているのかよく知らないから、あとはどこを探せばいいのか不安になってきた。辺りはもう暗くなってきている。今まで猫を飼ったことはないけど、聞いたことはある。猫は死に目を飼い主に見せないから、死期を悟ったら失踪すると。まさか、アメは強そうに見えてそうでもなかったのか?  という心配が頭をよぎった頃、アメを見つけた。アメは、コンビニの近くで誰かから食べ物をもらっていた。 「アメ!」  俺が呼びかけると、アメは俺に反応してこっちを見た。アメと同時に、アメに餌をやっていた人もこっちを向いた。小豆色のジャージを着た若い女の子だ。背は低いが、ものすごくぽっちゃりしている。部活帰りの高校生だろうか?いや、俺と同年代の20代半ばにも見える。顔がまんまるで、肌のはりがやたらいいからよくわからない。目は大きくて顔立ちは可愛らしいと思った。 「あ、この猫ちゃんお兄さんの飼い猫ですか?」  その女の子が尋ねてきた。 「はい、俺が飼ってます」 「ごめんなさい! 勝手に餌あげてしまって。てっきり野良なのかと」  アメはやんちゃなので首輪すら付けられずにいた。野良と間違われてもしょうがない。 「いや、大丈夫ですよ。……もしかして今までもこいつにおやつとかあげてました?」 「あ、はい、時々……すみません!」  なるほど、アメのデブ猫まっしぐら状態はこの子の影響もあったのか。 「もう食べ物あげないようにしますね」 「はい。じゃ、アメ、帰るぞ」 「アメちゃんって言うんですね。アメちゃんまたね」  女の子が言った。よく見たらこの子かばんも持っていない。学校帰りではないのか? 「あの、君って、学生?」 「え!? いえ! 違います! もう全然そんな年じゃ……この格好はダイエットで運動してて」  どうも社会人のようだ。学生じゃないとわかって不思議とほっとしていた。 「そっか。暗いから気をつけてね」  アメと一緒に帰る。家に帰ったあと、ぼんやりあのぽっちゃりの子のことを考えた。かわいい子だったな、と。  ダイエットのために運動っつってたな。あの子なら痩せたら申し分なくかわいいはず。  まずい、あの子が痩せたら引く手あまただ。早いこと手を打った方がいいんじゃないか!? 「おい、アメ、明日から俺も散歩に連れていけ!朝と晩、両方!」  俺は思わず毛づくろいしているアメに話しかけた。  
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