俺がいなくても

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俺がいなくても

 次の日の朝、アメと散歩に出た。朝日を浴びながら外を歩くのなんて何ヶ月ぶりかわからなかった。あの子の姿を探しながら歩く。  そういえば、俺、姉からずっと「あんた、デブ専よね」って言われてたな……自分が弱いのわかってるから、なんとなく頑丈そうな子を彼女にしてたんだった。  サボテンといい、アメといい、俺ははじめからたくましいのばかり選んでしまう性分だ。誰かにあてにされたいなんて考えていてもしょうがなかったんだ。  誰かにあてになんてされなくていいのだ。俺が、行きたい場所や、逢いたい人さえ見つけられればそれで、歩いて行けるんだ。こうやって――。  コンビニの近くまで行くと、昨日のぽっちゃりの子がえっさほいさとジャージを着て歩いているのが見えた。その子はアメと俺に気づいて近づいてきた。 「アメちゃん、おはよう!」  俺とアメは時々その女の子と話すようになった。その女の子は綾子という名前で栄養士をしていて、今は小学校の給食のメニューを考える仕事をしているそうだ。  この綾子、アメが丸々していて俺がガリガリなので、俺を「猫を可愛がるあまり自分の食費を削っている人」と勘違いしたようで、ときどき作りすぎた料理をくれるようになった。  その成り行きでお互いの家を行き来するようになり、付き合うようになり、なんと子供ができてしまいあっさり結婚することとなった。
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