12話 カワリモノの不思議ちゃん!?

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12話 カワリモノの不思議ちゃん!?

 校外学習からまた1カ月。  今クラスではサキと一番仲がいい。  朝、寮から校舎まで来るときはいつも一緒。  個人的にはミユとも関わってみたいんだけど、校外学習から特に進展はなく、自分から話しかけに行くタイミングも勇気もない。  男子とも恋愛関係とかは一切ない。これは入学前から。  能力も相変わらずわからないのに授業を受ける。  複雑な心境。  幸いまだ個人の能力についてというより、知識についてしか触れてないし、まだ能力を鍛えるための授業はほんとに少ししかやってない。  今は普通の中学生らしい授業ばっかり。  朝教室に入ると、その光景にわたしは目を疑った。  また新たな刺激が入ってきたみたいだった。  まあ毎日過ごすだけで刺激的なんだけど。  わたしの席の斜め後ろの席に人だかりが。  そこには初めて見る女の子が座っていた。  あの席は、今まで学校に来てなかった「メアリ」の席だ。  ということは…  女の子は突然席から立ち上がり、教室の後ろで呆然としていたわたしのところに駆け寄ってきた。  そして、黙ってわたしの顔をじっと見つめた。  透き通るような凄く白い肌。  凄く細くて艶やかな金色に近い髪。  宝石みたいに輝いた瞳。  なんか気持ち悪いたとえだけど、ほんと人形みたいに綺麗だった。  女の子はわたしの顔全体からわたしの目だけに目線を絞った。  なんか、ちょっと怖い。  その瞳も綺麗なのに鋭くて。  距離感近いし。  やっぱり、ハーフなのかな?  だからあんまり慣れてないんだ。  今まで来なかったのもそういう理由で… 「『カワリモノ中のカワリモノ』、あなた?お姉さま、言ってたの。」  し、喋った。 『カワリモノ中のカワリモノ』って…  初めてヨチ先生に会ったときに言われた。  どうして知ってるの? 「そ、そうだよ。わたし未だに能力わかんないんだよー。ほんと、なんでここにいんだか…」  わたしは精一杯笑った。つもり。  周りもこの子の()()()()っぷりに気づいているのか、少し驚いた顔をしているけど、引いてる素振りは見せない。  なんか、めちゃくちゃ不思議な子だな。  群を抜いて。  女の子が席に戻ったと同時にチャイムが鳴った。 「ん?メアリ…?」  教室に入ってヨチ先生は怪訝そうにメアリを一瞬見てから出席をとり始めた。  先生は入学案内のときにメアリのこと見たことあるんじゃないの?  この子がメアリじゃないとでも?  たしかに不思議な雰囲気漂わせてるけど。  まあ、仲良くしよう。  同じ班だし。 「君たち、ちょっと自習の時間伸びるかもだけど、僕サンが来るまで静かにしてるんだよ!」  出席確認も終わって、先生は職員会議に行ってしまった。  朝自習の時間が来た。  メアリ、勉強わかんのかな… 「メアリ、朝自習だけど、ワークとか…」  わたしは後ろを振り向いた。 「お姉さまに教えてもらって、ワーク、終わってる。とりあえず、みんなが習ってるところまでは。」  まじか。  わたしより勉強熱心じゃん。 「そ、そうなんだ。メアリちゃんの能力はなに?」 「『対象を鋭利にする』」  お、おぉ…  かっこいいな…それ。 「すげえな、学校来なくてもやってけんじゃね?モデルとか。」  メアリの隣の席、つまりわたしの後ろの席のカザトはそう呟いた。  褒められたのにも関わらず、メアリは顔色一つ変えずにまた声を発する。 「お姉さま、守る、目的。だから、まだまだ満足してない。お姉さま、傷つける人、許さない。」  メアリの目がまた鋭くなった。  次の瞬間、目を瞑って寝息を立てた。  寝落ちすんのはや!  やっぱり、変わってるどころじゃない。  ほんとにロボットというか、人形というか。  人間味を感じない。 「あ!次体育だ…サイアクー。なんだっけ、バレー?男女合同だしまじやだー。」  一番前の席のマイが叫んだ。 「メアリー、俺が守ってやるからな!!安心しろ!」  アキヒロはまた一番前の席からメアリに呼びかけたけど、メアリ、応答なし。  アキヒロは「対象を強化する」の能力でメアリの身体能力こっそり強化した方が早いんじゃ…と思ったけど言わないでおいた。  まあ、能力常に使いながら体育はアキヒロの体がきついか。  自習時間もあと少しだし、体操服に着替えておくか。  わたしは更衣室に向かった。  すぐにわたしの後をサキが追いかけてきてくれた。  更衣室は教室を出てすぐにある。  更衣室にわたしたちが入って間もなくほかの女子もぞろぞろ入ってきた。 「メアリ、アヤぴーが出てった後に校長先生に呼び出しくらってたよ。珍しいよね。あの校長先生が呼び出しとか。」 「え、ほんと?」 「覗きに行く?男子らの力も借りて。」  の、覗き…  いくらあの校長先生、いや、あの先生が呼び出しってよほどのことがあったんだよ。 「怒られるんじゃないの?」 「物は試し!いってみよー!」  いつの間にか着替え終わっていたサキがはしゃいでいる。  周りのみんな、しかもミユまで少し乗り気だったから、怖いけど覗きに行ってみる。  更衣室の外には男子も集まっていて、ちょっとワルいことをするという興奮に駆られている。 「まあダイジョブダイジョブ。オレら最強1年生!えいえいおー!」  リョウに続いて「おー!」と声を張り上げる。  小学校の時はこういう変な悪だくみには関わらないように生きてきた。  でも、少しくらい、変わったことしてもいいよね!
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