第10話 校外学習、砂糖づけ

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第10話 校外学習、砂糖づけ

「えぇ~、おごり~?俺のおみやげ代が…」  席に戻ると、うどんを食べ切った隣のグループのカザトが悲鳴をあげていた。 「やっぱり、全額自腹はかわいそうです。ワタシが皆さんの分お支払い致しますので…」 「まじ!?やったー!財布の危機を免れた!」  話によると、一番食べるのが遅かった人が全員分のうどんをおごるというルールで勝負していたみたいだった。  で、カザトが負けたと。  でも、セイカが同情して払うことに。 「おい、カザト、だせえぞー」  アキヒロがカザトの脛を蹴った。  あれは痛い。 「いって!ちょ、これまじ痛いって…」  カザトノックダウン。  てか、アキヒロだって結局ビックマルク全部食べ切れてないし!  あと6つくらいある…3つしか食べなかったんかい!  つっこんでる間に、わたしのたこ焼きが冷めてしまうので、ようやくわたしは席に着いてたこ焼きを口に入れ始めた。  ミユもねぎだこを目を輝かせながら頬張っている。よほどお腹が空いてたんだな。  ミユって、まじめでちょっと怖いイメージあったけどそんなことなさそう。  むしろ少しかわいいかも。 「アヤ、サツキどこか知らないですか?」  ねぎだこを飲み込んでからミユは喋った。 「確かに、どこ行ったんだろ。トレーはもう片付けてあるし、おみやげでも見に行ったんじゃない?」  サツキ、また消えた。  単独行動好きだなあ。  気になったけど、わたしもお腹が空いているから、食べるのに集中。  たこ焼き、まだ熱くてトロトロで最高。  はぁ~、とろける~。  落ち着きもつかの間。  次の瞬間、後ろから突然肩をガシッと掴まれたので、たこ焼きを噴き出すところだった。  振り返るとやっぱり、レイトだった。 「俺もお腹空いてるから、1個ちょうだい。」  そう言ったレイトの後ろからヒョコっと出てきたのはサキ。 「アヤぴーたちも丁度来てたんだ~、全員いるじゃん!」  レイト、サキ、マイ、リョウ。  まさかフードコートで全員合流しちゃうなんて… 「あれ、サツキは?」  マイ?  …だ。  どこから顔をコピったのかはわからないけど、顔が変わってて一瞬誰かと。 「対象の一部をコピーする」エグい能力だなあ。 「アキヒロ~、このハンバーガーなんだよ?オレ食っていい?」 「むしろ食って。俺もう無理。」  リョウはアキヒロの隣に座ってビックマルクを食べ始めた。  無駄になるところだったからよかったね、アキヒロ。  賑やかさは一層増した。  その分、周りの目線も増したけど。  楽しいからいいんだ。  たこ焼きも食べ終わってしまった。  デザート食べたくなってきた。  あ、そういえば、確かクレープ屋があったはず。 「ちょっとわたしクレープ買ってくるね。」  わたしが立ち上がると、ミユは驚いた目でわたしを見つめた。 「アヤさん、意外といけますね…」  わたし、大食い…?  いやいや、気にしない、気にしない…  飲食スペースを出て、曲がり角を曲がると、クレープとタピオカミルクティーを持ったサツキと鉢合わせした。 「サツキ、いちごミルクのキャンディーもらったときも思ったけど、甘党なの?」  まず最初に口から出た感想がそれ。  もうそれしか思いつかなかった。  クレープもちゃっかり2つ持ってるし。  黙って消えたと思ったら、がっつり甘党セット持ってきたなんて。  意外。  いや、顔は女の子っぽいからいいんだけど、雰囲気とか普段の荒っぽい口調聞いてたりすると意外。 「え?まあ、そうなんじゃね?あ、クレープ、食いたいんだろ?やるよ。はい。」  えぇー?  いちごのクレープだ。 「え、いいよ。さっきも飴貰っちゃったし。」 「いいから食え!」  確かに買いに行こうと思ってたからありがたいはありがたいけどこうも色々貰ってばかりじゃ申し訳ない。  ん?  なんでサツキがわたしがクレープ買いに行こうと思ってたの知ってるの?  おかしい。  クレープ買いに行くなんて、サツキに一言も… 「なんでサツキ、知ってるの?」 「落ち込んだ時には甘いもんだろ。ほら、クレープのアイス、溶けるぞ。」 「どうしてそんなに優しいの?」  サツキの目つきが鋭くなった。  サツキは、カザトとかユウトとかをいじって遊んだりすることもあるけど、なんだかいつも独りで行動したがる。  アキヒロには兄貴と呼ばれて慕われるほど、頼りにはなるし大人っぽいけど。  こんなに優しい感じの人だったっけ? 「珍しいだろ?まあ席戻れよ。このサツキ君が優しくしてやってるんだからさ。このこと、言うなよ。自分で買ったっていうんだぞ。わかった?」 「え…ありがとう…」  それ以上追及する勇気なんて、わたしにはなかった。
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