11話 校外学習、終わりへと

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11話 校外学習、終わりへと

「なっはー、疲れたー。兄貴寝てるしー。俺も寝よー。」  静まり返ったバスの車内。アキヒロが一人突然呟いて5分もしないうちに、後ろからいびきが聞こえてきた。  帰りのバスでは、起きているのはわたし一人だけみたい。  頭の中にふとサキのあの話が蘇った。 『カワリモノ』だって疎まれていたサキ。  わたしも疎まれるときが来るなんてな… 「お?アヤ、起きてんの?めちゃでかいため息だなぁ」  ヨチ先生の声だ。 「え、ええ、まあ」  聞かれてたのか、ため息。  先生も寝てるかと思ってた。 「まあ『カワリモノ』として生きる以上いろいろあるよ、僕サンだってこう見えて悩むことあったんだから。」  一番前の席からゲラゲラ笑い声。  あまりにも大きかったので、クラスのみんなの目も覚めた。 「うっせーガキ!」  アキヒロのストレートな暴言。  アキヒロ、気の毒。  5分前に寝ついたばっかりなのに。 「なあんだとお?アキヒロ、宿題倍にするぞ。」 「すいませんでした!女王マ・ユーコ様!」 「それでよし!」  いや、いいの…?  さっきまでの静寂とは打って変わってまた動物園に。  ミユもシャキっとした顔に戻って教科書を読み始めた。  そうだそうだ。わたしはカワリモノなんだから。  悩みがあって当然。  …で、まだ能力がなにかもわかってないのに?  って話に戻るんだよ。  わたしの能力はまだ検討もつかない。  校長先生は「使いこなしてる」って言ってたけど。  意味深発言するくらいなら教えてよ…  もしかして、能力に気づかないまま卒業ってことも…  無きにしも非ず。 「うわ!」  アキヒロの叫び声で頭が考え事からバスの車内に引き戻された。 「ど、どうしたの、急に。」  バスの車内だから顔は見えないけど、アキヒロ、めちゃくちゃ焦ってる。 「さ、財布、忘れたかも、おみやげ屋に…」  ―――――――――――――――  バスを降り、電車に乗り換えて学校に着くと、みんなは疲れからか足早に寮に戻っていく。 「戻ってきましたね。また室内生活が始まるのか。」  ミユはふーっと息を吐いて、早歩きで寮まで歩きだした。  ミユ、真面目でいい子だったな。  今までちょっと近寄りがたいところあったけど、普通の女の子。  わたしもミユの後を追うようにして歩いた。  寮までの廊下がなんだかいつもより明るく見えた。 「アヤー!後ろ見てみ」  サキの声だ。  振り返るとそこには長くて黒い髪を顔の前に垂らした人影。  貞子…  おそらくマイだ。  正直まだ少し明るいせいで全然怖くないけど、サキはどや顔でわたしを見つめるので返答に困る。 「う、うわぁ、こわいなー。マイちゃん、髪あげてー」  髪の下は、口が頬まで裂けた白目の女だった。 「いやぁぁぁぁぁ!」  まさか、髪の下まで能力を使っていたとは。  その後わたしの目が覚めたのは、保健室だった。
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