第5話 サキの過去

1/1

3人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ

第5話 サキの過去

「1番、中村晃弘(ナカムラアキヒロ)でぇーす!んーと、あ、趣味はバスケです!ヨロヨロ〜」 「5番、高橋颯稀(タカハシサツキ)です。嫌いな物は、味のない飯です。」 「8番、鈴木美優(スズキミユ)、好きな事は本を読むこと。よろしくお願いします。」  みんなが出席番号順に自己紹介。  嫌いな物を言ったサツキが1番異質か。  わたし、なんて言おう…  趣味はダラダラすること…なんて言ったら間違いなく引かれる!  能力についての紹介もできないしなぁ… 「9番、佐藤綾(サトウアヤ)です。えっと、能力はまだわかんないんですけど、まあよろしくお願いします。」  無難。  無難だ。  こんなんでいいんだよ。  というか、普通は能力の説明とかしないから!  だからといって趣味もないけど。  はぁ…  自己紹介も全員終わって、授業は今日はもう終わり。よし、帰ろ。 「ちょ、アヤぴー、どこ行くの?」  廊下を歩くわたしをサキが引き留めた。 「え?駅まで」  サキは帰る支度もせずキョトンとしているので、こちらがキョトンとしたくなる。 「え?アヤぴー、これから学校で寮生活じゃん。なんで駅まで行くの?帰るの?」  え?!?!?  聞いてないよ!?そんなこと!?  説明受けてません!意味わかりません!  おのれガキんちょセンセー、肝心なところを説明し忘れてるじゃないか…  どうしよ…  お母さんにもお昼過ぎくらいには多分帰るって言っちゃったし。  着替えとかもなんにも持ってきてないし、困ったことになった。元から困ってるけど。  取り敢えずわたしはサキと一緒に寮まで向かうことにした。  寮は別校舎にあるみたいで、ここから少し遠い。 「サキはさ、いつ自分の能力に気付いたの?」  自分の中に湧いたこの疑問は、わたしが能力に気付くヒントになるかもしれないと思って訊いた。 「え?ウチ?あー、小2の時。早い人は幼稚園の時には気付いてると思うよ。  ウチはさ、ウチが物に念をかけると物が凄いスピードで移動するのが面白くて、友達にそれをかけて遊んでたんだ。」 「へぇー、そんな小さい頃から気付いてたんだ…」 「でもね…」 「ん?」  途端に暗くなったサキの声に、まだ出会って半日しか経ってないにも関わらず、サキらしくないと感じた。 「あの日もまた、いつもみたいに遊んでたんだ。  なんとなく、この遊びが普通じゃないのには気付いてたから、先生の陰に隠れてやってたの。  いつもみたいに友達を飛ばしたら、道路の方まで吹き飛んじゃって…」 「ま、まさか…」 「友達は車にはねられて、命は助かったんだけどね、下半身不随になって、もちろん大人にもバレた。」 「それから、『カワリモノ』だって疎まれて、友達もずっといなかった。  あれから、自分に能力をかけて1人陸上部やってた。ドーピングしまくりじゃんって話だけど。  さっきLINLIN交換したじゃん?あれ、友達追加、みんなが初めて。」 「…」  サキの過去は、わたしが想像していたものよりずっと重苦しかった。  友達を下半身不随にしたと語る彼女は、もはやわたしの方なんて向いていなかった。  カワリモノの中には成功している人もいるけど、こうやって疎まれて苦しむ人もいる。  現に今までわたしはカワリモノには正直いい印象は無かったし、割といじめにあったりしている人も多いと聞いていた。  ここに来る人たちは、誰もが「孤独」を味わってるんだ…
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加