第6話 わかる時が来るまで

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第6話 わかる時が来るまで

「遅かったっスね、2人とも。なんかあったんですか?」 「いや…別に?あ、ユミっちってさぁ、自分の絵を物に反映させられるんでしょ?やってみてよー!」  寮の中はとても広々していて、まるで高級ホテルみたい。  …ってそういう問題じゃなくて。 「アヤぴーさぁ、寮生活ってこと知らなかったみたいなんだけど、着替えとかここ置いてあるの?」  サキがわくわくした声でセイカに尋ねると、セイカはニコニコしながら話した。 「ありますよ、見ましたけど、とても着心地が良さそうで…あと、他にも生活用品は完備されているようですよ。」  まじ?!  クローゼットを開けると、確かに着心地が良さそうなパジャマが沢山入っていた。  なら物の心配は要らなさそうだけど、お母さんがなんて言うか…  わたしは廊下に出て公衆電話まで向かった。LINLINはお母さんやってないし…  …ん?  公衆電話なんてあるの?  この学校に。  この学校がどこにあるかもわからないし、校内に本物の窓はない。全てスクリーンに作り物の景色が映っているだけ。  電話番号から住所バレるとか言うし、もしかしたら置いてないかも。  先生に聞くしかないか。  元より、ヨチ先生が悪いんだから!  廊下の先に人影が見えたので、わたしはそれを追いかけた。 「ん?あれ?アヤっぺじゃん!どーしたの!?マジ焦ってるじゃん!」  人影の正体は校長先生だった。  アヤぴーに続いてアヤっぺかい!と言いたかったけど、流石に先生なんでね。 「あの、校長先生。  お母さんに寮生活だって伝えずにここまで来てしまったんですけど、どうしたらいいですかね?というより、わたしも知らなくて…」  校長先生はギャハハと笑ってわたしを見た。 「マジかぁ〜。電話にしても、うちの学校圏外だからなぁ〜。まあ、りちゅにアヤっぺの家にソッコーで行ってもらっとくから!」  りちゅ、とは多分教頭先生だろう。(確か下の名前がリチだったはず。)  校長先生が多分家まで行ってたら、こんな校長のところにうちの子は預けられません、とか言われてただろうから安心。 「あの、校長先生。」 「ん?なに?」 「わたしの能力なんですけど…」  校長先生はふふふっと似つかない笑い方で笑いながら、わたしの目を見つめた。 「大丈夫。もう既にアヤっぺは自分の能力を使いこなしているから。  みんなと同じカワリモノだから、仲間はずれってことはないんだよ。」  校長先生はそれだけ伝えて本校舎の方に行ってしまった。  もう既に使いこなしている…?  どういうこと?  わたしは物だって浮かせられないし、人の心を読むことだってできない。  知ってるなら教えてくれればいいのに。  いつかわかるその時まで、わたしは待ち続けるしかないの?
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