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第7話 校外学習、やっぱり…?
xデーから1カ月。
わたしの感想は、みんな見た目は普通なのにとにかく変わってる。
サツキの能力は「対象を完璧に覚える」
これ、チートでしょ。
おかげで小テストも学期最初の確認テストも全部サツキが1位。
本人曰く、
「いくら覚えられるとはいえ、割と労力はいるんだぞ」
とのこと。
先生は
「たしかにサツキは授業が終わった後げっそりしてるから、使う労力を最小源にできるようにしていかないとね。」
だってさ。
サキが入学式の日に見つけた黒髪イケメンは国語の先生だった。
いつも授業中は眠そうなのに、国語はやけにイキイキしている。
アキヒロとリョウはすっかりクラスのお調子者キャラで定着して、今日もヨチ先生をからかっていた。
「センセー、踏み台で黒板が見えませーん」
「うっさいなぁ!僕サンをあんまからかうんじゃないよ!」
セイカは清楚系女子として男子にしょっちゅうからまれてる。
ユミは自分の絵を能力でアニメにする技術がすごくて、オタクっぽい性格だけどおもしろくてクラスの人気者。
マイはネットでライブ配信をしているらしい。
でもやっぱり普通とは一味違って、「対象の一部をコピーする」という能力を生かして「特殊メイク」として俳優やアイドルのコスプレ配信をしているそう。
実際寮で配信しているのを見たけど、あれは似すぎどころかそのままなのでびびる。
もちろん、寮の部屋は映らないように加工されている。
ユウトとカザトはサツキの格好のいじりの的。
でも時々能力でやり返してるのがおもしろい。
「痛っ!」
突然肩を強く叩かれたのでなにかと思ったら、そこには学級委員長の姿が。
「ちょっと、アヤ、放課後までスマホは禁止だって言っただろ?」
レイト。クラスの学級委員長。まじめだけど人にちょっかい出すのが大好きという矛盾した性格。
「いいじゃん、今ちょっと調べものしてただけ。」
「サイキックスクール校則14条。放課後までスマホの使用は禁止。」
レイトはニヤリと笑い、わたしの手は勝手に動き始め、気付けば手はスマホごとポケットの中に突っ込まれていた。
レイトの能力、それは…
「俺様の『対象に規律を厳守させる』能力に逆らうなぁ~」
わたしを嘲笑った後、彼は係の仕事に行ってしまった。
げらげらムカつく笑い方しやがって…
見た目は高身長の好青年って感じなのに。
まあ、スマホ使ってたわたしが悪いんだけど。
規律を厳守、か。
1カ月経った今でもわたしの能力はわかっていない。
先生たちは相変わらず教えてくれないし、わたしだって全然見当がつかない。
「ねぇ、アヤぴー、次の学活来月の校外学習の班決めするって!」
いつの間にか留守にしていたリョウの席にサキが座っていた。
あー!
校外学習、すっかり忘れてた。
サキの言葉で思い出した。
行先は日の丸電波塔。高所恐怖症の人には地獄らしい。
武辺駅で集合して、そこからバスだっけか…
「ウチ、みんなと一緒に行くのめちゃめちゃ楽しみ!誰と班になっても絶対楽しいし!」
「アキヒロとリョウが同じ班だったら大変でしょ…」
「ちょっとそれは言えてるかも…」
―――――――――――――――――――――
わたしの班はミユ、サツキ、アキヒロ、わたしのメンツ。
ここにリョウがいたら収集つかなくなってたわ。
でも…
「なんであんたと一緒なの!?ぜっっっったいいや。」
「あっそ。俺は別にミユがいやがろうがしらね。」
「おい、兄貴サツキとミユよう、夫婦喧嘩するなぁ。」
努力家でちょっと負けず嫌い、そしてまじめなミユと、能力で勉強はこなせてもともと器用、努力とは正反対の位置にいるサツキは水と油。
ミユが敵対心燃やして、サツキは受け流してる。
この熱、アキヒロとわたしが入る余地なし。
「あのさ、まず班の目標決めようよ。」
このまま2人の喧嘩を見てても進まない。
「おー、そうだな。このババアはほっといて。」
「なんですって!?…まあ、いいわ。決めちゃいましょう。」
この校外学習のルール。
その1・必ず班行動は守る。
その2・あくまで学習だということを忘れない。
その3・余計な物はもっていかない。
その4・能力を使って一般人に危害を加えない。
これを守れれば基本大丈夫。
目標もこれ以外のなにかを考えればいい。
「『メモをとるのを忘れないようにしよう』とかでいい?」
「うーん。それではあまりにも簡単すぎでは?『班員はまじめにメモをとりましょう』の方がいいですよ。」
「そ、そう?ならそれにしよっか。」
あんま変わってないし!
まあいいや。どちらかというと、わたしもまじめタイプではないし。
ミユがプリントに目標を書いていると、わたしの隣に座っていたサツキがぼそっと呟いた。
「久しぶりだなぁ、普通の校外学習。」
彼の中性的かつ凛々しい顔立ちが、物憂げに見えた。
「それ、どういう意味?」
独り言にしてはかなり意味深だ。
「いや、なんでもねぇよ。あー、はらへったー、めしー。」
まもなくサツキは白目を剥いて、机に突っ伏してしまった。
「サツキ、エネルギー切れ!おおおぉうぉう」
アキヒロは謎の雄たけびをあげて笑っていた。
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