第7話 校外学習、やっぱり…?

1/1

3人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ

第7話 校外学習、やっぱり…?

 xデーから1カ月。  わたしの感想は、みんな見た目は普通なのにとにかく変わってる。  サツキの能力は「対象を完璧に覚える」  これ、チートでしょ。  おかげで小テストも学期最初の確認テストも全部サツキが1位。  本人曰く、 「いくら覚えられるとはいえ、割と労力はいるんだぞ」  とのこと。  先生は 「たしかにサツキは授業が終わった後げっそりしてるから、使う労力を最小源にできるようにしていかないとね。」  だってさ。  サキが入学式の日に見つけた黒髪イケメンは国語の先生だった。  いつも授業中は眠そうなのに、国語はやけにイキイキしている。  アキヒロとリョウはすっかりクラスのお調子者キャラで定着して、今日もヨチ先生をからかっていた。 「センセー、踏み台で黒板が見えませーん」 「うっさいなぁ!僕サンをあんまからかうんじゃないよ!」  セイカは清楚系女子として男子にしょっちゅうからまれてる。  ユミは自分の絵を能力でアニメにする技術がすごくて、オタクっぽい性格だけどおもしろくてクラスの人気者。  マイはネットでライブ配信をしているらしい。  でもやっぱり普通とは一味違って、「対象の一部をコピーする」という能力を生かして「特殊メイク」として俳優やアイドルのコスプレ配信をしているそう。  実際寮で配信しているのを見たけど、あれは似すぎどころかそのままなのでびびる。  もちろん、寮の部屋は映らないように加工されている。  ユウトとカザトはサツキの格好のいじりの的。  でも時々能力でやり返してるのがおもしろい。 「痛っ!」  突然肩を強く叩かれたのでなにかと思ったら、そこには学級委員長の姿が。 「ちょっと、アヤ、放課後までスマホは禁止だって言っただろ?」  レイト。クラスの学級委員長。まじめだけど人にちょっかい出すのが大好きという矛盾した性格。 「いいじゃん、今ちょっと調べものしてただけ。」 「サイキックスクール校則14条。放課後までスマホの使用は禁止。」  レイトはニヤリと笑い、わたしの手は勝手に動き始め、気付けば手はスマホごとポケットの中に突っ込まれていた。  レイトの能力、それは… 「俺様の『対象に規律を厳守させる』能力に逆らうなぁ~」  わたしを嘲笑った後、彼は係の仕事に行ってしまった。  げらげらムカつく笑い方しやがって…  見た目は高身長の好青年って感じなのに。  まあ、スマホ使ってたわたしが悪いんだけど。  規律を厳守、か。  1カ月経った今でもわたしの能力はわかっていない。  先生たちは相変わらず教えてくれないし、わたしだって全然見当がつかない。 「ねぇ、アヤぴー、次の学活来月の校外学習の班決めするって!」  いつの間にか留守にしていたリョウの席にサキが座っていた。  あー!  校外学習、すっかり忘れてた。  サキの言葉で思い出した。  行先は日の丸電波塔。高所恐怖症の人には地獄らしい。  武辺駅で集合して、そこからバスだっけか… 「ウチ、みんなと一緒に行くのめちゃめちゃ楽しみ!誰と班になっても絶対楽しいし!」 「アキヒロとリョウが同じ班だったら大変でしょ…」 「ちょっとそれは言えてるかも…」  ―――――――――――――――――――――  わたしの班はミユ、サツキ、アキヒロ、わたしのメンツ。  ここにリョウがいたら収集つかなくなってたわ。  でも… 「なんであんたと一緒なの!?ぜっっっったいいや。」 「あっそ。俺は別にミユがいやがろうがしらね。」 「おい、兄貴サツキとミユよう、夫婦喧嘩するなぁ。」  努力家でちょっと負けず嫌い、そしてまじめなミユと、能力で勉強はこなせてもともと器用、努力とは正反対の位置にいるサツキは水と油。  ミユが敵対心燃やして、サツキは受け流してる。  この熱、アキヒロとわたしが入る余地なし。 「あのさ、まず班の目標決めようよ。」  このまま2人の喧嘩を見てても進まない。 「おー、そうだな。このババアはほっといて。」 「なんですって!?…まあ、いいわ。決めちゃいましょう。」  この校外学習のルール。  その1・必ず班行動は守る。  その2・あくまで学習だということを忘れない。  その3・余計な物はもっていかない。  その4・能力を使って一般人に危害を加えない。  これを守れれば基本大丈夫。  目標もこれ以外のなにかを考えればいい。 「『メモをとるのを忘れないようにしよう』とかでいい?」 「うーん。それではあまりにも簡単すぎでは?『班員はまじめにメモをとりましょう』の方がいいですよ。」 「そ、そう?ならそれにしよっか。」  あんま変わってないし!  まあいいや。どちらかというと、わたしもまじめタイプではないし。  ミユがプリントに目標を書いていると、わたしの隣に座っていたサツキがぼそっと呟いた。 「久しぶりだなぁ、普通の校外学習。」  彼の中性的かつ凛々しい顔立ちが、物憂げに見えた。 「それ、どういう意味?」  独り言にしてはかなり意味深だ。 「いや、なんでもねぇよ。あー、はらへったー、めしー。」  まもなくサツキは白目を剥いて、机に突っ伏してしまった。 「サツキ、エネルギー切れ!おおおぉうぉう」  アキヒロは謎の雄たけびをあげて笑っていた。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加