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第9話 校外学習、再会
「アヤが渡海中(とかいちゅう)に入学しないって聞いたから、どこ行ったのかと思ったら…連絡くれたらよかったのに。でも、進学先がそこじゃあね。」
「まさかねえ、『カワリモノ』だったなんてねえ。この派手な制服、そうだよねえ。」
元クラスメート(友達)たちは、わたしが着るはずだった制服を着て、わたしを別の生き物を見るようなどこか冷たい目で見ていた。
一般人の彼女たちはエスカレーターでわたしの通っていた「渡海小学校」から「渡海中学校」へ入学したみたいだった。
たぶん彼女たちも校外学習だろう。
カワリモノは、成功する人も多い反面、能力を使って犯罪を犯す人もいる。
やっぱり普通じゃないから、世間の風当たりは強い。
実際、わたしだって、いいイメージよりも悪いイメージの方が強かった。
わたしは何も言えなかった。
友達だった人。
普通に生きていれば、この人たちがわたしをそんな目でみることもなかったのかな。
「どちら様ですか?あなたたち。アヤの知り合いですか?それにしてはずいぶん性格が悪そうだけど。」
突然聞こえたきつめの声。ミユだった。
「なんだなんだ?ケンカはやめとけー。カワリモノの俺たちに歯向かったって勝ち目ねーよ。」
挑発するような声。アキヒロだ。
ついさっきまで窓の外の景色を怖がっていたとは思えないほど、2人の姿は逞しかった。
「なんだてめぇら。カワリモノで悪いか?少なくとも、そうやって人を見る無個性な一般人よりはマシだと思うけど。」
後ろから現れたのはサツキ。
「…ふん、こんなイケメンに庇ってもらえるなんて、アヤのくせに。」
彼女たちはそそくさとどこかへ消えてしまった。
ついこの間までクラスメート、かつ友達だったのに。
見下してたんだ。わたしのこと。
わたしはふっと力が抜けて、その場に崩れこんだ。
ショックは意外にも大きくない。
わたしには深い関係の友達はいなかったし。
それより、なにも言えなかった自分に一番腹が立っていた。
カワリモノでも、みんな同じ中学生なのに。
「アヤ、大丈夫ですか?気にすることないです。あんな人たち。」
ミユはさっきとは打って変わって優しい声で笑った。
「これ、食って元気出せ。」
サツキがわたしに差し出したのは、いちごミルクのキャンディー。
女子力高いな…わたしも思わず笑いがこぼれる。
いちごのつつみ紙はまるでわたしの気分を明るくさせようとしていると思うくらい鮮やか。
「おぉ~?兄貴、まじイケメンすね!アヤも気にすんなよ!」
「うっせえ!…でも、まじ、あんなんで落ち込むことないから。」
みんなに共通すること。
普通の人以上に友達思い。
ここ1カ月だけでも、それはすごく感じた。
みんな孤独を味わってるから…?
わたしもみんなくらい強くなれたらな。
「ありがとう。わたしはもう大丈夫。」
わたしはキャンディーを頬張って立ち上がった。
気が付けば、もうお昼どき。
フードコートにつくと、ユミたちのグループの姿があった。
「あそこの班、全員うどんですよ。うどん愛好クラブじゃないんだから。」
ユミ、セイカ、ユウト、カザト。
黙々とうどんをすする姿。
誰も一言も発さない。なにかあったのか…
目つきもやたらと真剣だし。
「お前らー。買ってこいよ。これからもっと混むぞ。」
いつの間にかアキヒロとサツキはマルクでハンバーガーを買ってきたみたいだった。
え?
あれ?ビックマルク?2人合わせて10個もある!?
ビックマルクは、普通のハンバーガーの1.5倍サイズのハンバーガー。
なにする気だ!
「まさか、全部食べるの?」
アキヒロは小さく頷いた。
サツキはニヤニヤしながらそれを見つめた。
「『ビックマルクどれだけ食えるかチャレンジ』開始!」
アキヒロは席に着いた途端、シェイクとビックマルクを喉に流し込み始めた。
「こいつ馬鹿じゃね?ビックマルク10個食べるんだって。まあそのうちの一つは俺のだから、9個だな。」
うどんを黙々すする班。
大食いチャレンジに励むアキヒロ。
隣同士、シュールである。
「私も頼みに行くとしますか。」
ミユが席から店の方向へ歩きだしたので、わたしもそれに付いていく。
サツキの言う通り、さっきよりも人が増えている。
わたしたちは一番空いていたたこ焼き屋に並ぶことにした。
でも、いくら一番空いているといっても、前には既に5人ほど。
「対象の列を自然に抜かす」能力でもあったらなぁ…
お腹空いた。
たこ焼き屋なんて、来たの久しぶりだな。
ここ1カ月ずっと学校にいたし、体育のときはスクリーンで青空が映し出された体育館で授業受けてたし。
そもそも本物の外に出てなかったな。
今のうちに、外の空気、すっとこ。
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