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「美来のお姉さんって感じでどう?」
「渚紗は私の妹だよ。絶対にお姉さんじゃない」
えーっと不満気な声の渚紗を制して、理久が前に出る。
「俺は美来のお父さんになってやる」
「絶対無理!従兄って感じかな」
「家族じゃないじゃん!じゃあ、幸樹は?」
幸樹の目が期待で少し大きく開かれて美来を見つめる。少しどきりとしながら、美来がお兄さんと答えようとしたときに、幸樹と美来を不安気に見比べる渚紗の顔が目に入った。
「……弟かな」
期待が外れたのか、幸樹が目を細めて肩を落とした。
「さっきのを見たら、美来の弟って嫌なイメージしかないんだけれど……。僕は兄貴がいいな」
「贅沢言うなよ、幸樹。俺なんて従兄だぞ。一人だけハバじゃん。俺は絶対美来の親父になってやる!」
どんなん?みんなが声を上げて笑った。美来が嫌なことを思い出さなくてすむように、理久も幸樹も渚紗も、大げさなゼスチャーと言葉で、自分たちの役割に文句を言って、相手の役割をからかっては大声で笑った。
笑って、笑って、何がおかしいのか分からなくなるくらいに笑って、今は大人なんていらない。この仲間がいればいいと思った。
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