冬のはじまり

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冬のはじまり

 「なんだここは。」 それが俺がこの街に来ての第一声だった。目の前に広がる大きな高い建物。行き交うたくさんの人たち。 その人の多さに圧倒されつつ、俺はからっている大きなリュックサックをよいしょっとからいなおす。 リュックサックの中には着替えや学校の問題集などがたっぷり入っている。 見るからに都会のこのT県の街。 俺は今日、わけあって、祖父母の家に住まわせてもらうことになり、このT県に1人で電車を乗り継ぎやってきた。 祖父母と言ってもあまり会った覚えはない。 小さいときにいろいろ遊んでもらったのは覚えているが小学校低学年ぐらいからはあまり会わなくなった。 小さいときの思い出もうっすら覚えているだけだ。 急にあまり会っていない年頃の孫が引っ越してくることになり、迷惑なのではないだろうかと申し訳ない気持ちに襲われる。 きっと、面倒くさいことになったといやいやながらも承諾してくれたのだろうな。 そう思いつつ、見慣れない、大都会の街を歩き始める。 俺が今まで住んでいたK県は、結構な田舎で、高い建物はなく、田んぼがたくさん見受けられていた。 ボールで遊んだり散歩をしたりすると気持ちが良いのだろうけど、友達もいなかったから休日はだいたい家で暇を持て余していた。 そんな田舎者の俺が今、こんな都会のT県の県庁所在地T市の中心部にいる。なんだか不思議な気分だった。   「おやおや、冬太(ふゆた)、よく来てくれたね~。」 人混みに圧倒されながらもやっとの事で祖父母の家に到着すると、おばあちゃんがこころよく出迎えてくれた。おじいちゃんも隣でにこりと笑いながら、うんうんと頷いている。
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