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少しつまらなさを感じたのは、予告編を見た時点で犯人役の予想がついてしまったところだ。裏表がある役柄をこれまで幾度もこなしてきた男優がその犯人役を務めていたのだが、旅客機の中に製薬会社のサラリーマンとして搭乗している時点でかなり怪しい。いわゆる「キャストばれ」というやつで、映画やドラマを数多く見ていると、こういった要らない予想が立つようになってくるものである。探偵が犯人を名指しした時には、やっぱりか、と一瞬熱が冷めたけれど、彼の演技や後半の展開のおかげで十分に映画を楽しむことができた。作り手側には後半の展開で観客を飽きさせない自信があり、それだから敢えて分かりやすいキャスト配置にしたのかと、そんな予想も立つ。
エンディングロールが「協賛」に差し掛かり、友広はソファ近くのローテーブルに置いてあったノートパソコンを起動させる。ふと視線をテレビ画面から逸らすと、外はもう日が落ち始めていた。友広が住むアパートと同じくらいの高さがある、向かいのアパートが夕日に照らされ、町に日曜の終わりを告げる。
最後までエンディングロールが流れ終わると、ちょうどパソコンのログイン画面が立ち上がる。テレビ画面が最初のメニューに戻り、タイトルとポスターのメインビジュアルが映し出された。この映画も本当は劇場で鑑賞したいところだったが、上映期間中が過去最高の金欠月間だったため、円盤のレンタル開始まで我慢していたのだ。見ごたえは自宅のテレビ画面でも十分にあった。借りてきて正解だ。
パソコンの、テキストアプリを起動させる。新規ドキュメントを開き、友広は肩をぐるぐると回した。右肩、その次に左肩。それから首をぐるりと回す。右回り、その後で左回り。テレビと、自分が座るソファの間に置いたローテーブルから目薬を取って点す。右目、そして左目。準備は整った。
リモコンで操作し、「本編再生」をもう一度押す。少しの暗転の後、画面には制作会社と配給会社のプロモーションが流れる。ざわざわ、という空港の環境音が鳴り始め、映画がまた始まる。
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