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とはいえ、それまで脚本を書いたことは一度も無い。大学時代、「脚本家 なるには」とベタに検索をかけてみたり、そこで知ったハウツー本を読み漁ったりしてみた結果、友広にはそもそも、ドラマを分析する視点が圧倒的に足りていないことが分かった。これまで数えきれないほどのドラマ、ついでにカウントすると数々の邦画を鑑賞してきたけれど、そのストーリーがどんな展開の組まれ方をしているのか、どんな効果を狙った書かれ方をしているのか、それが観客をどう引き込むのか、といった感じの、構造に着目する見方を一切してこなかったのだ。正直落ち込んだが、くよくよはしていられない。人並みに就職こそしたが、諦める気はさらさら無かった。
それから友広は、気になった映画をレンタルし、その脚本を起こすということを始めた。プロが書いた完成品を一度自分なりに脚本の形に起こしてみれば、展開や構成を冷静に分析しながら書き方を勉強できる気がするし、少しだけ執筆する感覚を疑似体験できるかもしれない。一話につき約五十分、一クール十本前後のドラマは、今の友広の実力では到底書けそうにないし、一作品を消化するのに映画の五倍の時間がかかる。今は兎に角、見た作品のタイトル数を増やしたい。そのため起こすのは映画に絞った。具体的な脚本の書式は本で詳しく解説されていたので、それを参考にしている、一人暮らしを始めてからこつこつやっているこの脚本起こしは、就職して半年、この映画で十二本目になる。
友広は再びリモコンを手に取り、再生ボタンを押した。映像が動き出す。その画面に映る俳優の一挙手一投足を、脳のメモリに焼き付けるかのように、友広は見つめる。

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